大傑作である『犬神家の一族』のリメイクを計画し、実行した一瀬隆重にうんざり。一瀬氏がどれほど『犬神家の一族』に思い入れがあるのかは分かりました。ただ、興収も最終的には10億円程度に終わり、結果としては惨敗に終わった本作。30年前の前作の興収にも届いていないんだから、一瀬氏の責任は重い。

やはり金田一耕助を演じるのは石坂浩二さんしかいないと断言出来るほどの、石坂さんがもたらしてくれる安心感の健在振りにはホッとするものの、前作と95％位同じ事をやられたんじゃ、どう考えたって前作よりは出来が上回る事はありえません。

前作と比較し、キャストが弱すぎる。高峰三枝子、小沢栄太郎、島田陽子、坂口良子さんなどの力は大きかった事を再認識。大好きな加藤武さんの姿も、誠に恐縮ですが、痛々しい。署長役は加藤さん意外には考えられない気持ちは分かるが、今の加藤さんの実年齢からして、警察署長には無理があると思う。富司純子 さんも、高峰三枝子さんに比べると、表現不測で「怖い松子」という偏りすぎた印象の演技になっている。松子の背負っているものも感じられず。松嶋菜々子さん、深田恭子さんは一瀬プロデューサーが市川崑監督に押し付けたキャスティングだろうが、完全なミスキャスト。第一、松嶋さん珠世には老けすぎでしょう。深田恭子さんも戦争直後の女中にはどう見ても見えない。台詞回しも気に入らない。ただ、松坂慶子さんだけは好印象。前作から交代したキャストの中で、一番良かった。

石坂金田一が復活するのであれば、どうせなら他の作品が良かった。市川崑監督が一番好きと仰る『本陣殺人事件』が見たいが、「本陣」だとなかなか企画は通らないですかね？