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[コメント] 硫黄島からの手紙(2006/米)

生きるといことの難しさを、この時代に教えてくれたことに感謝します。奇麗事ではない現実がそこにある。そしてこれを現実として新たに認識する必要があるんだと思う。
chokobo

うちに町内では、毎年年末に「火の用心」の夜回りをします。年末の28日から31日までの四日間、夜7時から3回に分けて町内を拍子木を持ってまわります。

実は、この夜回りを楽しみにしていることがあって、それが年配の方の「戦争体験話」なんですね。つまり、この地区は昔空襲があった場所なんです。

という話題もあって、今年(2007年1月)の正月は戦争について今一度考えてみようと思い、この映画も含めて数本の戦争映画を鑑賞しました。

正直申しまして、この映画は今の自分にはとても厳しい映画でしたね。生々しいシーンの数々がちょっと厳しい。しかし、これまで、ここまで「死」を見せる映画があったでしょうか。

勿論、拳銃やミサイルで銃撃されたり、放射銃で燃やされたり、色々な技術を駆使して「見せる」戦争映画はたくさんありましたが、ここまで「死」を生々しく見せる映画はこれまであったでしょうか。しかも、映画の主題はあくまでも「手紙」です。「死」ではありません。「手紙」を際立たせるために、これほど生々しい「死」を見せる必要が本当にあったのでしょうか?

さて、イーストウッド監督作品は自分なりに相当見ているつもりでこのコメントを書くつもりだったが、実は齢70歳にして彼は猛烈な勢いで映画を撮り続けています。

著名なところではアカデミー賞受賞の『許されざる者』や『ミリオンダラー・ベイビー』や、有名な『マディソン群の橋』、『スペース・カーボーイ』、『ミスティック・リバー』など、映画賞を受賞しまくる作品のほか日本で未公開の作品などを含めると人間業とは思えない作品群を世に送っています。

彼は1930年の生まれですので、70歳を越えて年1本以上のペースで映画監督をしています。しかもその間、俳優としての仕事もこなします。

そんな彼が今回取り組んだ映画は戦争です。

どうやらスピルバーグと組むことによって、この企画のイメージがふくらんだようですね。

この主人公の人物像は、いかにもアメリカ好みではありますが、そんな主人公を日本の古い体質の尖兵達が立ちふさがります。そして戦争末期で、勝ち目のない戦に祖国を思う若人の姿、そしてそんな非現実的な世界に反駁する若者の姿を孤立させて、この映画を救いの道にいざないます。

これだけ「死」をみつめて、この映画の終わりをハッピーと思える人は、そういないでしょう。終わりにやや救いがあったとしても、映画全体を包む世界は理不尽な「死」だと思うんです。

私は全く戦争を知らない世代ですが、この映画が本当にあった怖い話として考えると、体が痛くなるような思いでした。

そしてイーストウッドは、この痛みを見せようとしたのではないでしょうか。

(評価:★5)

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