[コメント] ディパーテッド(2006/米)
この映画のことを考えて一瞬デイモンとディカプリオの役を逆にしたらどうだったかとも思ったのだが、よくよく考えて結果的にはこれで正解だったのだと思うことにした。というのも、ディカプリオは上手い役者だが、実は結構アクの強い役者でもあり、1人にさせるとその個性の強さゆえに映画の流れをも停滞させてしまうところがある。しかしここにもう一枚二枚上手の役者が絡んでくるとそのアクは抜け、逆に映画自体に芳醇な香りを醸し出すスパイスと化すように思えるからである。その意味で今回彼をデイモン、ニコルソン、シーン、ファーミガ、ウォールバーグら達者な面々で囲んだそのキャスティングの妙に、まずこの映画の成功の要因があったのではないかと思っている。
また、デイモンの出過ぎない主役ぶりにも好感を持った。出世を重ねるごとに徐々に我が強くなるあの微妙な性格づけも彼ならではの繊細さであったと思うし、冷徹になりきれない心根の部分なんかも非常に上手く表現されていたと思う。あとニコルソンが全く混じりけのない、見るからにニコルソン然とした存在であったところもファンとしては嬉しい限りだった。
さらに本作でついにオスカーを受賞したスコセッシの老練な演出にも感心した。実は映画のメリハリという点ではやや一本調子に過ぎた感もしないではないし、膨らませるところはもっと膨らませることができたのではないかという思いも確かに捨てきれないのだが、それでも最後の最後までテンションを下げることなく「映画」を走り切らせたその手腕は、やはり称賛に値するものだと私は思っている。
終幕へと向かう、あの畳みかけるような展開も私には嬉しいものだったし、唯一の主要な女性キャラ・ファーミガの切ない心境を生かした『第三の男』もある意味オリジナル以上に決まっていたように思う。
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