[コメント] それでもボクはやってない(2007/日)
現に今、暮らしている日本の社会が、そのまま映画になってしまうような「危うさ」をもっているというシャレにならない事実を突きつけられた感じがした。
聞くところでは周防正行監督はこの映画作製にあたり相当丁寧に関係機関、関係者に取材したようで、実際、この映画にはいわゆる映画的脚色というものがほとんど感じられず、まるでドキュメンタリーか、もしくは俗にいう「再現フィルム」を見ているかのような、非常に自然で、日常よく、とまではいかなくても見たことがある、聞いたことがあるような事柄ばかりで構成されている。それだけに一種、異様な迫力があり身体が震え上がるような恐怖を感じさせた。
ともかく警察が捜査して犯人だと責任をもって送ってきた以上、それに間違いがあるはずがないということと間違いがあってはならないということが混同されて始まる刑事裁判で、被告側が相当な労力、資力と時間をかけざるえないという現実も大問題だし、日常的にチカンという犯罪が多発している現実も大問題だし、もっといえばあんな満員電車が毎日運行されているというのも異常な事態なのだろう。
そういうもろもろの要因が寄り集まってみると、実は日本の実際の社会、日常の生活というのはそのまま映画になるようなものなんですよ、ある意味では異様とも言えるかもしれませんが、そういう事実に気づいてましたか、と周防監督からそっと耳元でささやかれて飛び上がって驚いた、という映画だった。
ついでに言えば、そういうことを冷徹に見つめる目があり、それを映画として構成する能力があれば、予算に関係なく優れた映画ができるもんだなあということにも改めて気づかせられた。
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