[コメント] 魔笛(2006/英=仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この「魔笛」という作品は作品単体としては、実はあまり評価されてはいない。興行主のシカネーダーがモーツァルトに新作オペラを依頼する際、いくつかの古典を引用して(ついでにフリーメーソンの教義も中に放り込んで)、ほぼ間に合わせのように書いた脚本が元。これは当時の状況からして、大衆オペラを作るのはそんなものだと言われてもいる。文学的に言えば、物語の出来はさほど良くはない。ただし、それがモーツァルトの手によってオペラにされた時に、その迫力とエンターテインメント性溢れた内容として世に出てきたのだ。
物語を忠実に演じると、タミーノは最初夜の女王に選ばれ、彼女のために働いているはずなのに、いつの間にかザラストロの試練を受けることになり、その試練に打ち勝ったとき、ザラストロの方が良い人物になってしまうと言うひねりが入ってる。前半と後半で妙に雰囲気が異なってしまうという内容は、今に至るもその理由はよく分かっていないという。
どうやらブラナー監督は、そのねじれを更にねじってみせたらしい。
まず、名作を映画化したというのは良いのだが、ところで何故第一次世界大戦を舞台にする必然性があったのかが不明。近代にする理由付けはオープニングシーン以外何もなく、中盤以降は格好以外中世のオペラそのもの。設定の必然性が全く無い。
オペラ部分を英語にするのも痛し痒し。非常に分かりやすい英語で、名曲を聴くというのも新鮮な体験ではあるが、節回しとかが聴き知ったものと結構異なるため、「あれれ?」と思えてしまう部分も何箇所かあった。
総じて言えば、ブラナー監督が付与した部分は必然性が無く、「だからなんなの」で終わってしまうところがなんとも…まあこれが“監督らしさ”と言えばそのまんまだが。
とはいえ、手を加えなかった部分。オペラの演出に関しては申し分なしと言っておこう。CGのうざったさはあるものの、歌い踊りながらしっかり細部まで演技をこなしていて、それがはっきりと見て取れるのは映画ならではの良さというのもよく分かっていらっしゃる。
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