面白かった。原典も知らないし時代劇もホラーもほとんど観ないけど、実に面白かった。よかった。たいへんうれしい気分。

　特に気に入ったのは、物語の大筋として恐さがちゃんと増幅していってること。親同士の因縁が残したのは、基本的には、黒木瞳のまぶたに傷が入ってしまうことと、その傷が治らないことだけなんだけど、そこに女の愛というか情念が絡まってきて恐さが一気に膨れ上がる。その情念が主人公に井上真央を殺させると、今度は黒木の情念に上乗せして井上真央の個人的な恨みも乗っかってくる。後半に入ると、親同士の因縁（赤子の傷・無表情）がどんよりと物語の底辺に漂いつつ、黒木の怨嗟もその勢力衰えず、さらに井上が時おり暴走しては人を殺しまくるという、話が進むに連れて二重三重の恐怖が折り重なって主人公を包み込んでゆく。そのグルーブ感が映画の心地悪さ（良い意味で）とテンションをぐんぐん引っ張ってくれるので、最後の最後まで恐く楽しく観ることができた。あと、麻生久美子がかわいかった。

　んー、というか、最初に黒木が主人公の思いに応えたのも親の因縁から続く運命的な業だったのだとすると、彼女もまた被害者なのか。だとすれば、妹・木村多江の描写がちょっと薄味というか、妹のほうにも情念が宿って悲劇の渦に巻き込まれたほうが自然なのかも。他の、主人公に惚れちゃった女子たちに比べると、木村のキャラは事の発端の当事者にしては造形が甘かった気がしないでもない。けど、これで木村までトチ狂って主人公に迫ってたら恐すぎて観ていられなかったかもしれないなぁ。麻生久美子かわいいなぁ。

　ともあれ、この物語の面白さには原典の完成度の高さがまずはあるんだろうけれど、奥寺脚本の整理整頓の巧さも大きく貢献してると思う。中田演出の「じんわり恐い」と「びっくり恐い」のバランスもしっくり来たし、映像も麻生久美子もきれいでした。

　余談。あゆちゃんの歌がすごい不人気のようですが、個人的には全然違和感なかったです。というか、浜崎あゆみの歌をワンコーラス通してちゃんと聴いたのは生まれて初めてなのだけど。あと麻生。