[コメント] プラネット・テラー in グラインドハウス(2007/米)
集団で乗り物に乗って逃走するシーンや、基地での攻防戦など、至る所に絵的な工夫があって楽しいと思った。特に M16 with グレネードランチャー装着以降のヒロインの活躍はバカバカしくてすばらしい。昔のアクション映画っぽいズームとパンも面白いなと思った。
ただ、映画を楽しみながら気になった点は三つあった。
一つは、フィルムを意識した遊びがくどくて、その上アイデア自体はあまり新しくないのが悲しい。手塚治虫が「勢い余ってキャラが別のコマに突き抜けちゃう」シーンを描いたのは斬新な手法であるが、今それを映画でやるのは古すぎないだろうか。この映画がクラシックテイストを前に出してきているにしても、だ。
二つ目は、主要キャラが死にすぎること。ゾンビが死にすぎることを言っているのではなく、意識ある人間が死にすぎるのが安易だと思う。人を殺して場面を盛り上げるのは出来れば避けたい演出だ。
三つ目は、必要以上にグロいこと。ゾンビの皮膚病変をリアルにCGを駆使して描くこと自体に必然性が感じられない(『ナイト・オブザ・リビングデット』を見れば、ゾンビの皮膚表現がとことんリアルである必要はないことが判る)のだが、それはまだしも、実際の皮膚病疾患の画像をも、これでもかと映し出すセンスには疑問を感じた。
こういうこと全体を通して、「”映画好きが作りました!”的表現をして楽しんでいる監督」を感じてしまったのがマイナスポイントだ。「映画好きであることが、隠しても勝手ににじみ出してくる」という感じでは無いのが残念。風景画の中に、その風景を描いてる本人まで描いちゃった感じというのか。
冒頭の予告編風ショートフィルムはすごく楽しかったし、全編を通して映画的な楽しさは感じた。でも、なんというのか「映画バカが作ったバカ映画」という演出を試みながらも、その高みまでは抜け切れていないのが残念だ。
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