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[コメント] めがね(2007/日)

実に気味の悪い“竜宮城”の物語。妖怪カキ氷ババァとその手下どもから、何としても逃げ切らねばならん。
林田乃丞

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 前作『かもめ食堂』よりずっとわかりやすく、この作品が資本主義社会から切り離された異世界ファンタジーであることは諒解できた。だが、そこで描かれたファンタジー世界がまったく気味の悪い独特のルールとモラルに因って成立するコミュニティであり、例えば、夜な夜なコンビニの裏に集まってオトナ社会の矛盾を語り合う暴走族のみなさんや、新宿中央公園の青テント暮らしの人たちに見えている世界とはもしかしたらこういう景色なんじゃないかという、ちょっと受け入れ難い居心地の悪さに苛まれた。そしてトランクを棄てたタエコが庭先でメルシー体操を始めたとき、「ああ、ついに魔物に食われてしまった」と、その不安は頂点に達した。その“竜宮城”の中ではトランクを棄てても次から次にアイロンの効いた衣装が出てくるからいいようなものの、現実には、一度それを棄ててしまえば取り戻すのは容易ではないのだ。

 根本的に、荻上監督は「癒し」とか「たそがれ」とかいうメッセージの意味を履き違えていると思う。真に休息が必要なのは、そのトランクを棄てたくても棄てられない人たちであって、「棄てればラクになれますよ」という提案は無責任で無意味な放言でしかないと思うのだ。

 とにかく、私は中途半端に目が悪くて車の運転をするときと映画を観るときくらいしかメガネをかけないのだけれど、もう早く外したくて仕方がなかった。このままメガネが外れなかったらどうしようかと思った。その意味では一級品のサイコホラーだよ、もう。3WA.Cさんが「桃井かおりが演じたら〜」と書いておられますが、きっと桃井だったらあいつら全員撃ち殺した上にハラダを焼き払って颯爽と立ち去ってくれると思います。

(評価:★2)

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