[コメント] 平原の待伏せ(1953/米)
このアラモ砦から逃げて来た男が主人公のグレン・フォードだ。本作冒頭はアラモ砦での激戦の最中のシーンであり、最終盤には、幌馬車守備隊の兵士たちが「サンジャシントの戦い」に向かうという場面があるので、調べると、1836年2月末(3月初旬?)から4月下旬の約2ヶ月の期間のお話であることが分かる。
本作のグレン・フォードは、砲弾が飛び交い、爆発炸裂する中の兵士の一人として、まるでモブキャラのように登場する。しかし、その後すぐに、折れたテキサス革命旗を掲げなおすため、一人砦の壁の上を進んでいくという勇敢な姿が描かれる。この勇者の描写は、彼のキャラの基調となるセットアップだ。この後、彼が一人、砦を離れることになる経緯については、詳述しないでおくが、非常に周到な省略技法で語られている。
砦を後にしたフォードが、戦友たちの家の焼け跡を回るシーン。最後に自宅に着くが、こゝの見せ方も実に上手い。馬場柵に記された名前から、パンして黒焦げになった家屋を見せる。生き残ったメキシコ人少年カルロスの話では、フォードの妻子を殺したのは、メキシカンに扮装したアメリカ人の仕業だと云う。こゝから本作は、フォードによる復讐譚になる。
では、他の主要人物を書いておこう。フォードの敵役のウェイドはヴィクター・ジョリーで、その部下にネヴィル・ブランドがいる。彼らが狙うのは銀行の金なのだが、これは、メキシコ軍を恐れて町から避難した人々の幌馬車隊が運んでいる。この守備にあったっている騎兵隊の隊長はヒュー・オブライエン(オブライエンとフォードとはアラモ砦内で一度会っている)。また、避難民の中のリーダー的存在が、新聞社を経営していた隻腕の(右腕のない)チル・ウィルス。そして、カルロス少年の面倒を見ると進んで引き受ける女性がジュリア・アダムスで、彼女がヒロインだ。本作のアダムスも美しく撮られているが、ほゞ恋愛譚という場面が無いのは惜しい。フォードとの関係もサラッとした描き方だし、オブライエンは妻帯者なので、三角関係になる雰囲気も全くない。
さて、こゝも詳述は割愛するが、当然ながら(?)終盤はフォードが幌馬車隊を守る立場になる。しかし、中盤以降、アラモから逃げた臆病者、卑怯者と云われ、散々な扱いを受けいていたフォードが、終盤になって、いきなり幌馬車隊を任されるのは、ちょっと性急なプロット運びだと感じる(いくら守備隊が離れなければならない状況になったとは云え)。
あと、邦題の「待伏せ」に関しては、大平原を行く幌馬車隊をジョリーやブランドら悪党たちが、峡谷で待ち受ける、という場面を指していると思われるが、逆に、幌馬車隊のフォードやウィルスと、アダムスら女性たちが、単発ライフル銃を構えて待伏せする、という場面もある。他にも全体に良いアクション演出は多々あり、一番驚かされたのは、馬体の下で転げ回るファイトシーンで、これだけ激しく馬の四肢の間で格闘するシーンは他で見たことがない。また、幌馬車を凄いスピードで走らせたり、チェイスシーンの横移動ショットなどの、大平原のショットが良く、特に峡谷や丘の上などの高台から撮った大俯瞰は美しい。撮影は名手ラッセル・メティだ。
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