[コメント] 理由なき反抗(1955/米)
冒頭の警察署のシーンで既に三人は遭遇しているのだ。ナタリー・ウッドは赤いコートを着ている。ジェームズ・ディーンは、サル・ミネオが寒がっているので、自分の紺のジャケットを貸そうとするが拒絶される。これは、ラストへの伏線だ。上着の色の繋がりを続けると、チキンランのシーンの直前から、ディーンは赤いジャンパーを着る。ラスト、ディーンはジャンパーをミネオに貸し、ミネオが赤いジャンパーを着ることになるのだ。上着の赤色は冒頭からラストへ向かって、ウッド、ディーン、ミネオと受け継がれることになる。ついでに書き留めておくと、中盤でディーンの父親のジム・バッカスが、明らかに女性モノのエプロンを付けているシーンがある。しかも、皿を落として床にぶっちゃけた食べ物を拾うという場面。ちょっとやり過ぎな感はするが、これも父権の在り様の象徴だろう。
あらためて考えると、本作は、ほゞ一日のお話なのだ。夜、警察署で出会った三人の、翌日の夜までの話。三人だけでなく、チキンランの相手バズ−コーレイ・アレンや刑事レイ−エドワード・プラットも含めて、何て濃密なコミュニケーションだろう。明らかに、現実離れした御伽噺というか、神話の世界の構築なのだ。
さて、夜の崖上でのチキンランもいいが、本作のシーンの白眉、最も高揚感のある場面は、何といっても、グリフィス天文台(プラネタリウム)の裏の場面だろう。ディーンの車のタイヤが切られる部分から始まる、バズとの喧嘩のシーンだ。ディーンとミネオが建物側におり、彼らから車を撮った俯瞰ショットの高低の感覚にもうしびれる。タイヤの横にいるウッドの脚。その後、ナイフでの対決になる瞬間の緊張感も凄い。LAの街並みがずっと背景に見える縦への立体的な画面。いや、実に素晴らしい。
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