[コメント] ミッドナイト イーグル(2007/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
日本ではなかなか予算的に難しい本格的アクション映画の誕生。山岳小説とポリティカル・フィクションを合わせた、設定的にはとても豪華なものとなっている。
徐々に明らかになっていく陰謀と、不時着した機体に積まれている“荷”とは一体何であるのか、それをめぐる特殊部隊同士の戦いと、それに巻き込まれてしまった元船襄カメラマン…やや出来すぎというか、詰め込みすぎの感はあるが、この設定を見た限りは、大変面白そうに思える。
ただし、これだけ詰め込んだ物語を最大限活かせる舞台は映画ではない。本作は小説だからこそ成り立つ物語だ。
本作を一見してわかるのは、物語の運び方が完全に小説の間合いによって作られていると言うこと。
その例はいくつも取れるが、例えば人間の意志というものを示す場合、小説では描写と台詞。映画だと動きと表情という違いがある。だが本作は、その部分を映画として作ってない。
これが全編に渡って展開する。だから本作は映画であるにもかかわらず、話自体がほぼ言葉による説明と会話だけで作られてしまった。緊張感のあるシーンこそ多いものの、ほとんどが密室状態の中、言葉のやり取りで緊張感を演出している。小説だとこのやり方は十分な見どころなのだが、映像化すると、単にだらだら会話してるようにしか見えない。
これを映画として成立させるならば、もっと動きの方を重視しないとバランスが悪くなってしまう。その本来変えねばならない部分をひねらずにそのまま演出してしまった感じ。主人公のヒロイック性や覚悟さえも行動ではなく会話によってすべて説明されてしまうため、かなり興ざめする。それら映画用に変換し直さねばならないはずのシーンを、そのまんま小説形式で映画にしてしまった。
物語そのものは面白いのだから、これを小説の面白さから映画の面白さに転換させねばならないのに、それをやろうとしなかったことが本作の最大の問題点だろう。優れた小説が良い映画になるわけではない事を示す好例だろう。そこら辺がきちんと出来てさえいれば傑作ともなったのに。
これまでかなり質の高い小説の映画化を作ってきていた成島監督だけに、本作で失敗したのは痛かった。
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