[コメント] 哥(1972/日)
現代日本の奇天烈なシンデレラ。そもそも篠田三郎が、奇妙な自己規律でおのれを縛って生きている変な男なので、急にこの物語の根幹に迫るセリフを叫び始めても少しも胸に響かない。俗物である兄らのほうが類型的な悪党ではあれ心情は理解できるのだから、これはまぎれもない失敗作であろう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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魂がいつの日か宿るであろう依代を守りつづけることと、9時から5時までしか絶対働かないことと一体何の関係があるのだろう。「飯を食うな」と言われれば、あとで冗談だと頭を下げられても「一度発せられた言葉は、時を遡らないかぎり否定することなどできません」などと我を通す。それでいてロボットのような男かと思えば、姉のことを「淫売」だとはっきり口にするし…ちょっと篠田は故意に変人のように描かれているきらいがあり、彼を弁護する気にはなれなかった。
とはいえ彼が、腕だけで寺の石段を登りきった役者根性は認めねばなるまい。さすがに階段落ちまでは演じられはしなかったが。
蛇足だが、桜井浩子の顔を映さないようにしたり、カールや日本髪で彼女と判らないようにしたのは、往年の百合ちゃんやフジ隊員を知る元少年の夢を壊さない配慮だろうか。それにしても彼女はアバラが見えるほどガリガリで、およそ肉欲をそそる体ではなかった。
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