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[コメント] 魍魎の匣(2007/日)

出だしは筋と登場人物の相関図を追うのがきついが、これでもだいぶ割愛しているとか。妖気と推理物の融合たる作品世界では、魍魎側の者たちも、それを解明する側の者たちも残らず描く必要があるのだろう。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
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陰陽師、探偵、作家、の男三人の画はかなりいい。彼ら三人が猟奇や妖異を文明的に談じるあたりの愉悦は充分味わえた。彼らに加えて、妹分の雑誌記者、刑事コンビという、魍魎を解明する側の人々たちの描写は、淡々として調子がいいのだが、一方で、箱詰の肢体、夜の少女たちの遊戯、棄てられた人造人体、それ自身がまさに巨大な生命たるプラント…こういう対象は、もっと禍禍しく撮って欲しい、踏み抜いてはいけない怪域へのめって撮って欲しかった気がする。監督のタッチなんだろうけど、少しドライで中立的なところが、主人公たち側の理性を描くのには向いていても、怪奇や妖気を描くには食い足りなさを感じてしまう。云うなれば、芋虫のようになった少女に、何か蠱惑的なものを感じさせてしまう危うい倒錯感のようなものがあればもっと良かったんじゃないかなあ、と思う。久保竣公側の見え方というか。多分監督はそこを淡々と描くことこそ好きなんだろうけど。

本作が京極ワールド初体験だったのだが、もっと妖怪民俗学っぽいものとか、おどろおどろしいレトロな猟奇犯罪物かと思ったら、そういう要素も含みつつも、アンドロイドであったりとかっていう人知的なオブジェクトの選び方が面白いなと思った。単に怪奇な雰囲気だけを狙う演出では、京極夏彦の世界観を表現するのにはやはりダメはダメなんだろうな、と思った。

あと、物語世界の独自性もさることながら、キャラクターが魅力的なのも原作の成果なんだろうか? でも、役者もかなりいい線いってるんじゃないの?と思わせる。阿部寛と堤真一の特殊能力者ゆえの押し出しの強さに対し、椎名桔平の引いた感じの味わいなんか捨てがたい。まあ、でも何と言っても、田中麗奈の中禅寺敦子が最高。昔の探偵小説に出てくる美少年のようなイメージといったら良いでしょうか。こんな妹がいたらいいなあ。

(評価:★3)

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