[コメント] 魍魎の匣(2007/日)
ビジネスモデルとしての「邦画」とは別の次元で創作された、映画人の気概を感じる良作。あらゆる部分に斬新さがあるが、最も成功しているのは人物造形だろう。俳優と配役が融合し、オリジナリティ溢れるキャラクターが生き生きと活動している。
原田監督の撮影スタイルは、二台のHDカムによるシーン通しの撮影(長回し素材)を編集段階でテンポよく繋いでいくもので、『ボーン・アルティメイタム』のポール・グリーングラスとも共通してカット数は多くなり、膨大な情報量とスピーディーな場面展開が特徴となる。それを実現させるために、準備段階ですべての要素をきっちり固めておく必要があるのだが、そこで徹底したキャラクターの掘り下げと肉付けがなされたようだ。例えば、阿部寛や黒木瞳が(要請に応じて)主体性のないイメージとしてCMに出ている姿と比較して、この作品中の彼らはまさに役者の凄みを最大限に見せつけてくれる(それに比較するとやはり宮迫博之は次点となるが、いいシーンもある)。
原作は未読なのでその視点からのコメントはできないが、厚かましいくらいに映るところもまた映画の推進力になっていると思う。そういう意味ではあらゆる場面でいろいろな種類のおもしろさを発見できる作品だ。
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