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[コメント] スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師(2007/米)

基本的にピカレスク・ロマンの趣なのだけれど、ロンドンの暗部が素晴らしく緻密に描写されており、多少のリアリティの無さや主演俳優陣の歌の下手さは気にならない。でも、やっぱり聴きどころはトビー少年役エド・サンダースの美声と、スティーブン・ソンドハイムの凄絶なスコアだ。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いつものティム・バートン節といえばそれまでなのだけれど、『バットマン』のゴッサムシティの名を借りて描きたかったのは、この「糞だめの街」ロンドンであったのだろう。それがあまりに素晴らしく描写されているものだから、R-15指定の主な原因とされるスプラッタ描写は殆どショッキングさを緩和されている。

その中でのバートン組の演技が大したものなのだ。ジョニー・デップは今までの作品にない鬼気迫る貫禄を発揮してくれているし、ヘレナ・ボナム・カーターも行動とは裏腹に愛らしくすら見えてくるのだ。それはこの地獄のようなロンドンで生き抜いてゆくのに必要な「タフさ」ゆえと自分の目に映る健気さだ。

惜しむらくは若手助演陣の魅力の欠如だ。怪物化したデップ、カーターの自滅を越えて、若い二人の逃避行をラストに添えて欲しかったと思うのは、自分の甘さゆえだろうか。余韻に欠けるラストシーンだけが、この作品で自分の胸に引っかかった唯一の小さなトゲだった。

(評価:★5)

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