[コメント] ラスト、コーション(2007/米=中国=台湾=香港)
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アン・リー監督のインタビューをみていたときこんなコメントをしていた。「ヒロインには土の臭いのする女優を選んだ。田舎の素朴な娘の雰囲気が必要だった。」 なんで?トニー・レオンでスパイ物でおまけに性描写過激っていったらマギー・チャンとかコン・リー級の女優が必要でしょ?と、私はその時まったく意味を解さなかった。
しかしストーリーをなぞればなるほど。「滾る若き血をもてあますボンボン大学生が政治活動という名目でとりあえず政府の悪そうなやつをだまして暗殺しよう」っていう計画が発端。なんじゃその安直な作戦!!そりゃあ「田舎の素朴な娘」らしさも必要ですね。。 私はこの導入部分からしてなんか乗っていきづらかったです。あっさりだまされてるトニー・レオンもなんか「付き合ってあげてる」感がある気がして。新人女優さんのタン・ウェイ、がんばってたけどトニーの実力とセクシーさの前では・・・ああトニーが勿体ない。
ただそんな中、この映画で鮮烈に残ったシーンがある。 ヒロインがもう一度作戦に参加することを決心する場面。彼女は前回の作戦でやむを得ず処女を喪失している。でもその甲斐無く作戦は失敗。その後は意気消沈して輝きも失い、後悔の念を胸に親類のところで身を寄せながら苦学生に戻っていた。普通ならそんな目にあってまでもう一度したいと思うようなことでもないし、ましてや命を張ることなのに、あの場面で彼女は強く「やり抜く」という決意を見せているのは何故なのか。 それは、躰を張ってまでやろうとしたこと、二度と取り戻せない自分の純潔を無駄にしたままにはおけないから。思いがけずやり遂げるチャンスが巡ってきたから、ということではないだろうかと思う。 その目標は、イー(トニー・レオン)にほぼレイプされるような形で達成した。さらにどん底に落とされそうなものだけど、彼女は彼が去った後、ベッドの上でほほえむのである。 それはなんとも不思議だった。あの時、命がけでやろうとしたこと。イーの注意を引く女になり、隙をついて殺す。その第一歩となった。男の乱暴なやり方は、女(自分)に惹かれていく自分自身を押さえるための行動ではないんだろうか。焦らそうとする彼女をねじ伏せて。ある意味余裕を失っているのは彼の方だ。そういうイーの真意も見抜いて、あの微笑みがあったのではないかと思うのだ。 リリアンヌさんもコメントしていらっしゃるように、アン・リーっていう監督の人間描写や視点というのはほんとにすごい思う。(09' 12 DVD)
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