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[コメント] 4ヶ月、3週と2日(2007/ルーマニア)

映画ってのは、色々な歴史の積み重ねであったりするんでしょうが、この映画は何かを超えている。何だろう・・・?
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







じーっとこの映画を見ていて思うことはとめどもなく果てしないですね。怖いというかリアルというか・・・何とも表現できない不思議な世界です。

どうでもいいようなことが次々と思い浮かびます。

主人公の女性が途中で気持ち悪くなってもどすシーン。これジル・クレイバーグが出ていた『結婚しない女』を思い出しました。あれも女性の映画。そして男性から迫られて自立する映画。本作にもに通う部分があったような気がします。

画面の中心から奥へ向かう孤独な長い線も印象的です。寮の廊下。路面電車がすれ違うシーン。夜の街を走る道路。これらはベルイマンの世界なんでしょうか?そういえばベルイマンは良く扉を使っていました。扉の奥の影、その扉の影、そして扉の向こうと手前の遠近感。

こういう風景って何を意味するんでしょう。きっとそれは映画的な表現であって、画面の奥と手前で心情がすれ違う場合に使われるんでしょうね。不思議な映画表現ですね。

それにしてもカメラはほとんど動きません。ホテルのフロントでも、彼氏の部屋での会話、そして彼氏の家族とのホームパーティ、そしてラスト、友人との対峙。いずれもカメラはじっと動きません。その画面の中に不思議な緊張感が宿りますね。すごいなぁと思います。

映画というのはカメラで生かされます。カメラの動きが見る側のすべてですね。カメラ目線で観客は登場人物の気持ちを追いかけます。この映画では特別美しい風景や光景がないのに、いずれのシーンも印象的ですね。エレベーターホールで一人孤独に友人を心配する主人公の姿。このシーンは、画面の隅で切れかかった電球がついたり消えたりしています。これ主人公の彼女の心情そのものですよね。堕胎した友人の胎盤を持って走り、そして友人を心配してホテルに戻れば友人はいない。心配で心配で気持ちが切れかかりそうなワンシーンですね。キューブリックの映画にも出てきそうな、静かな恐怖が訪れるシーンです。

ラストも見事ですね。『秘密と嘘』という映画がありました。肌の色の違う親子が対面するシーンがとても印象的でしたね。このラストは、あのシーンを連想させました。じっと二人はほとんど言葉もなく座っています。相手の表情をうかがうでもなく、ほとんど無表情。そして主人公がカメラに向かって振り向いた一瞬で映画は終わってしまいます。

悲しい終わり方でしたね。このシーンの先を色々想像させます。この二人の友情は続くのか、それともこれを境に二人の友情に亀裂が生じて別れてしまうのか。そんな未来を想像させて映画は遠慮なく終わってしまいます。

短いテロップの後、ラブソングが流れて暗い画面を明るく演出しています。しかし、そこで聞こえる明るいメロディーは、むしろ悲しさを増長させます。空虚な一日を過ごした主人公の虚しさがどんどん押し寄せてきます。

救いがあるのかないのかわかりませんが、これまで見てきた映画の多くの印象を小さく表現しつつ、これまで経験したことのない全く未知な世界の映画でした。映画的表現を使った、映画とは全く違う世界をみせつけられましたね。

参りました!

2009/02/17

(評価:★4)

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