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[コメント] たぶん悪魔が(1977/仏)

地下鉄に乗ったり樹が切り倒されたりするショットが続くだけでやたらに面白い。掃除機と赤いカーペット。環境汚染のフッテージ。いとも簡単に盗まれる拳銃。本筋と全く関係の無い、バスの乗客が乗り降りするカットの異様なかっこよさ。クライマックスの即物的な緊張感も素晴らしい。私は『ラルジャン』より『白夜』かこれですな。
赤い戦車

今回久々にブレッソンを観て気付いたのは、まず「脚」か「手」がフレーム内にあって、それから何らかのアクションを通して身体が画面内に出てくるショットが多い。場合によっては体の上部が映らないこともしばしば。あと場面や場所が飛ぶ際に、まず車の走行音や歩行音が先にくる。

「眼のためにあるものと耳のためにあるものが重複してはならない」「存在や事物をその分離可能な諸部分において見ること」「美しい写真、映像はいらない。必要欠くべからざる映像と写真があればよい」(いずれもロベール・ブレッソン「シネマトグラフ覚書」より抜粋)ということだろうか。本作はこうしたブレッソン的なスタイルが分かりやすく凝縮されていて、とても勉強になった。

ところで序盤の教会で神父と民衆が討論しているのだが、その横でオルガンの調律や掃除が行われていて、合いの手をうつみたいにブーとかビーとか鳴るのがめっちゃ笑えた。ここで1回だけ挟まれる、掃除機を動かす手と赤いカーペットを映したカットがちょっとオリヴェイラを想起させる。

えっ!?そこでそれ入れちゃう?みたいな。『ブロンド少女は過激に美しく』で女がキスする際片足を上げるカットにも似た感覚。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)ゑぎ[*]

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