[コメント] クローバーフィールド HAKAISHA(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ちゃんと起承転結のある極めて正当な(ある意味先の見える)脚本は、ディズニーの十八番じゃないか。それに撮り方だってカムコーダーって言うだけで、その実、観客に対し緊張や動揺を与えたいときは画面を大きく揺らし、逆に鍵となるようなことを語ったり休憩するときは画面を安定させているし、カメラワークなんて玄人跣足(当たり前か)。そのしっかり感を土台にした割には、体感できる中身がチョットの希望と大きな絶望で、最後は客自身も死ぬハメになるってとこが、今のご時世を反映しているんだろうけどね。一方、脚本家にとっては、奴は何者だとかどこからやってきたとか、その後マンハッタンがどうなったとか、辻褄の合う説明をしなくていい分とっても楽だし(4人のうち誰も「トイレに行きたい」って、言い出さなかったのはちょっと意外だった。トイレを探して填っちまうってお約束を期待したのにさ)。
もう一つ。登場する怪獣がビルの陰や川の中にチョコチョコ隠れてんのか、たまにしか現れないと思ったら現れ方も、サッとやってきて獲物を捕ったらサッと去っていくなんて、まるで夜な夜なサバンナを徘徊する猫科の、しかもちょこっと弱めの肉食動物よろしくだ。爆撃にも砲撃にも耐えるんだから、もっと堂々としてりゃあいいのにさ。ゴジラは、どこからでも見えるほどに堂々としてますが。このあたりも、怪獣といいながら自分たちの知っている「強い捕食動物のスタイル」の域を出ていず、エイリアンを観たときの様な「クリーチャーに対する衝撃」がないというか、絶対的で絶望的な事を象徴するクリーチャーを創造する想像力が足りないというか。
アイデアもいいし、それを支える技術も人もあるのに、肝心の「面白くする創意工夫」がなんか片手落ちの印象があり、それでもこの映画の製作に金を出し、また現場で作った人たちのことを思うに、アメリカの次の世代人は、社会的にも発想的にも閉塞感に見舞われているんだなと感じた。やっぱり、テロから始まるイラク戦争の内なる影響は重いんだろうか。そんな彼らのために、ジョン・ダンの『誰がために鐘は鳴る』を捧げたい。
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