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[コメント] 誇り高き挑戦(1962/日)

日活ノアールな火口噴煙のニュー東映。夜の街に埋立地、ワンショットの連発にジャジーな劇伴と、後にはお目にかかれない深作。黒眼鏡の鶴田浩二は青春スタアと任侠の端境期、過去の清算しか生きる術がない男がやたら似合う。丹波哲郎は常に同じ。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







業界紙鉄鋼新報のゴロツキ風記者鶴田が三原産業の武器工場取材、朝鮮戦争後は何処が買う、入れ違いの客見てラオスかベトナムかスマトラか。会社は絡む鶴田に広告料渡して引き取って貰う。不渡り出したがMSA協定で潰れないようにはなっている会社。

客のクルマに丹波哲郎発見。特務機関諜報部員からGHQに鞍替えした。東洋芸術協会なる幽霊会社設立と聞いて鶴田が訪れると、偽物の男が座っていて、ラーメン喰らっているヤク中みたいな秘書がはなはだ印象的。後半の精神病院でも丹波の偽物が病室にいるというギャグがある。

丹波は追われる鶴田をクルマで救って再会。占領中に基地で諜報部に殺された鶴田の恋人、取材した鶴田を丹波はリンチして一流紙を馘首に追いこんだ。あれはスパイだったのだと丹波はペラペラ喋る。この件の持ち込み記事を一流紙の小沢栄太郎に黙殺されて鶴田は占領中も戦後も何も変わっちゃいないと激怒。元カノの妹大空真弓は米軍相手のクラブでバイト。気が済むまで書いて。

兵器工場の客を追いかけると亡命した王妃楠侑子の記者会見。母は日本人で日本語喋れる設定、母は革命軍に銃殺された。武器買いに来たんじゃないのかという鶴田の問いをはぐらかし、即座にウソと判るスピーディな展開。丹波は彼等にMS型マシンガン売りこみの武器商人。やたら英語が巧いが吹替えかも知れず。

鶴田は丹波を狙っている革命政府の隠れ家突き止めて同じアジア人として協力しようと提案すると、相手は信用できない、戦時中もジャポネは同じこと云って鉄の鎖に変わった。朝鮮戦争ほかアジアの戦争でまた儲けていると嫌われる。王妃は革命政府と通じていて、革命政府に買ったマシンガン渡すが偽トラック。丹波は彼等とも商売はじめる『用心棒』パターン。王妃は丹波を裏切り、ハーマンミュートバックに町中逃げ回り刺される超ロングのいいショットがある。

鶴田は工場で、取材元然として旧知の女工中原ひとみと再会。自宅を訪ねると朝鮮戦争で怪我したチコ・ローランドと結婚している。卓袱台で薬缶使う姿がユーモラス。MS型のマシンガン作っているだろう、あれで私たち助かったの、受注先調べてくれ、自衛隊でしょ? しかしいつもの検査は来ないわ。埋立地で8ミリ回す女スパイに捕まり中原拷問のショット連発。鶴田は王妃をつけて夜の郊外の神経科病院、勝手にらせん階段くるくる登ると牢屋に中原。捕まって牢屋の鶴田に王妃は拳銃渡し、いろいろあって中原はチコに救出される。

鶴田は告発書きまくり、鉄鋼新報にも見放される。ペア組んでいたまだ子供の梅宮辰夫の未来志向で行きましょうみたいな逃げ口上がとてもリアルで心に残る。鶴田には過去の清算しか生きる道はない。丹波はスピーディ過ぎて混沌としてよく判らないが最後は組織に狙われ、埋立地で殺される。国会議事堂が見える空き地で鶴田は大空に告白されて書き続ける決意を固める。黒眼鏡外すと目に傷があるのだった。熱血新聞記者は美しい。今や希少種。

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