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[コメント] 大いなる陰謀(2007/米)

ロバート・レッドフォードは真面目すぎる。「風刺」という美しい日本語を教えてあげたい。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まず褒めよう。 「アメリカ軍アメリカ軍って偉そうな事言ってるけど、支えてるのは黒人やメキシコ人なんかの下層民なんだよ!」ってことを、台詞だけじゃなくドラマに消化している点は評価したい。 逆に、評価できる消化(昇華)はそこだけかもしれない。

やりたい事も言いたい事もよく分かるし、結構ロバート・レッドフォードが社会派小品好みなのも知っている。ありがちな娯楽や安易なハッピーエンドに陥らず、一方的な主張を声高に叫ぶだけでない点もロバート・レッドフォードらしい。 でも、映画としての出来自体どうなんだ?

制作側がツバ飛ばしながら熱弁ている感じがして引く。映画って、観る側が身を乗り出して「それで?それで?」って話の続きを聞きたくなる(観たくなる)もんだと思うんだけど、この映画は逆じゃない?「聞いて!聞いて!」って映画が言ってる。 優れた作家は、本当に言いたいことを隠して描くんですよ。

話も設定も「さもありなん」だし。

構成は変化球だけど、設定はド直球。この話「政治家が国民を死に追いやっている」という内容で、政治家・ジャーナリスト・思想家・若者という設定は真正面過ぎやしませんか。 芸が無いと言ってもいい。いや何も、主人公を床屋の主人にしろとは言いませんけど。

あれこれグジャグジャしゃべってる状況を観ながら『日本の夜と霧』を思い出したよ。 あれもグジャグジャしゃべってて「なんだかなあ」という印象なのだが、それでも“結婚式”という特殊な状況下で“総括”が始まるという面白味があった。

例えばアメリカ映画でも、ベトナム戦争時期の作品は(反戦・厭戦という一方的な主張であるにせよ)もっと「暗喩」であり「風刺」ではなかったか。 意識・無意識に関わらず、“時代の空気”が切り取られていなかったか。 そして、社会派映画は常に体制に対する“挑戦”ではなかったか。

高給取り豪華俳優並べて、スタジオ撮影の安定した演出で「さもありなん」な話の“体制的な作りの映画”で“社会派”って言われてもねえ。

(評価:★2)

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このコメントを気に入った人達 (4 人)Santa Monica 死ぬまでシネマ[*] トシ セント[*]

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