[コメント] 逃走迷路(1942/米)
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「定本 映画術」の中でトリュフォーは『北北西に進路を取れ』をこの『逃走迷路』のリメイクという位置づけにしているが、比較してみると『北北西に・・・』の方が明らかに完成度が高い。『逃走迷路』はあまり流れが良くない映画であり、決して成功作であるとは言えないと思う。
冒頭、工場の火災のシーンでの掴みは良い。その後、逃げ回る主人公を匿う人々が、盲目の老人だったり、奇形サーカス団だったりと、社会におけるマイノリティであるという点も面白い。事件に巻き込まれたことで恋に落ちる主人公とヒロインという構成も、ヒッチコックの映画ではお馴染みのものだ。
しかし、中盤から流れの悪さが強調される。ニューヨークによってきてすぐの富豪屋敷での一連のシークエンスあたりからだ。公の場における孤独感の表現という意味でも、ここでのパーティ会場よりも、『北北西に・・・』のオークション会場の方がやはり上手である。『逃走迷路』ではこのあたりから退屈感を味わうことになり、それがそのまま悪い流れとして最後まで引きずってしまう。
確かに、クライマックスの自由の女神のシーンは、撮影、編集、演出、どれをとってもヒッチコックの巧さが滲み出ていて、緊迫感のある見事なシーンだと思うが、それでもやはり素晴らしいシーンだけでは物語の欠陥を補うには至らなかった。
ヒッチコックは主演俳優が気に入らなかったり、詰め込みすぎた内容を後悔したり、クライマックスで落ちそうになるのは悪人よりも主人公の方がより緊迫感が出たはずだと語ったり、この映画には少なからず不満があるようだが、それに頷けてしまうのが残念ながら事実である。
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