[コメント] 歩いても 歩いても(2007/日)
言葉の攻防戦。いや、防御無しの殴り合いと言ったほうが正しいか。お寿司をつまみながらの長回しは、下手な戦争ものよりもドキドキしてしまった。
タブーな話題も許されてしまうルール無制限のリング、それが実家の食卓。「相手の気持ちを考えて」「空気読んで」なんて言ってくれる優しい審判はそこにはいなくて、ひたすら強者は己の主張を繰り返し、弱者は耐え続ける。息子の嫁の前で「子連れやもめ」なんて言ってしまったあのシーン、私は思わず目をふさいでしまったよ。
家族の姿に近接しながらそんな危うい雰囲気を隠すことなく徹底的に描ききったこの作品、ポスト小津時代(と言うには年数が経ち過ぎているが)の一つの到達点ではないだろうか。是枝監督、自分の見えた世界を2時間の尺に詰めるだけ詰め込んだあなたはスゴイです。私はためらいなくあなたを日本映画界の巨匠と呼びたいです。そして、世界がこんな風に見えてしまうあなたの毎日はさぞ苦しいことでしょう。
阿部寛に近い立場の私にとっては終始息苦しい作品だったのだが、おじいちゃんが血のつながらない孫にあれこれ世話を焼いてくれるシーンだけは救われた。おばあちゃんが孫にうなぎをあげるシーンも。やはり家族には若いのが必要なんだ、大人だけじゃうまくいかない場面も、子供がいればみんな優しくなれるんだ、と感じて少し良い気分になった。
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