[コメント] クライマーズ・ハイ(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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この映画を良くしているのは、無名の俳優たちであったと思う。 ちょっとボサボサのお河童頭に大きめの黒渕眼鏡の女性。 プッシュ式の電話。 ピタっとしたベスト。 七三に分けられた髪型。 ワンフロアに70年代の風景が蘇っていた。 机に腰を掛け雑談する者、鉛筆を動かし記事を書く者。 「そうであっただろう」と連想させる、記者たちの日常。 そこに、日航機墜落と言う大ニュースが入った。 先ほどまでのんびりとしていた彼等の動きは、急に激しくなる。 情報収集のために電話を掛け、一人、また一人と駆け足でフロアを後にする。 その様子をカメラは誰を追うではなく、フロアを映し出す。 カメラから遠い者達までもが、その雰囲気を作り出すための役者。 その上手さに感動を覚えた。 この映画には随所にそういったシーンが織り込まれている。
ところが、その雰囲気に馴染みきれていない堤真一が鼻に付いた。 彼は、群馬から離れられない地方新聞の記者という設定でありながら、どことなく垢抜けているのだ。 本局から飛ばされてきて、地方の者たちと馴染めない記者・・・その設定の方がしっくり来る。 名も知らない俳優たちのいい演技にうっとりし、堤真一で興ざめる。その繰り返しの映画だった。
その中で、一番好きなシーン。 「いいか、お前等よく聞けよ。」 堤真一と反目する部長役遠藤憲一が部下に説教するシーンは、本当に素晴らしい。怒られる側も怒る側も、それが映画である事を忘れてしまう程、自然なのだ。 また、説教の内容がゾクゾクさせる。
そして、一番好きな言葉。 遺族に無料で新聞を配ると堤真一を提案した時に、反対意見を述べる人たちに向かって中年の俳優さんが発した言葉。(名前知らなくてごめんなさいっ。) 「だめだよー、いい意見は採用しなきゃー。」
その、朴訥とした言い方にまたも感服。
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