[コメント] ダークナイト(2008/米)
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『バットマン ビギンズ』は正直、好きじゃない。それは私がティム・バートンのバットマンが好きだから。クリストファー・ノーランのバットマンはバートン版と真逆だったというか、私の好きな要素が徹底的に排除されていたんです。だから今作もヒース・レジャー以外に期待はしていなかったし、バートン版を超えられるはずがないと思っていたんです。そんなバートンの呪縛から、今作は見事私を解放してくれました。文句言いまくろうと息巻いていた私に「ゴッサムはこんなんじゃn…!」って最後まで言わせてくれなかったんだもの。そんなケチをつける暇がないほど、どんどん今作のカラーに飲み込まれていってしまいました。
当然ジョーカーもその片棒を担いでいたのはもはや言わなくても分かる事。なんか憑依されてんじゃ…っていうよりも、私が今まで思い描いていた「ヒース・レジャー」がそこには全くいなかったというか、彼の匂いすら感じなかった事が驚きでした。ジャック・ニコルソンがむしろ可愛そうに思えてしまう程。二人の演じたジョーカーは確かにどちらも狂っていて怖い。でもその怖さの質が全然違っていました。ジャック・ニコルソンのジョーカーは「こんな奴、いたら絶対怖い!」だったのに対し、ヒースのジョーカーは「こんな奴、本当にいそうで怖い!」だったんです。また、ジャック・ニコルソンのジョーカーは完全にフリークスとして存在していましたが、ヒースはジョーカーを生身の人間として演じました。時代性もあるかも知れませんが、完全にヒースのジョーカーの方がリアルで怖い。
そんな恐ろしい存在に、究極の選択を迫られるって事がもうすでに心臓バクバク。クライマックスは性善説派の私にもさすがにちょっとそれはないだろっていう展開で、若干興ざめしてしまったのは否めませんが、善が悪と表裏一体であると説いた彼なので、悪も善と隣合わせだと言いたかったのでしょう。決してそうではないと私は思いますが。
それからデントが元々持っていた胡散臭さが私はとても気になりました。彼を根っからの善人だと一度も思えなかった私には、彼がトゥー・フェイスとなり、恐らく今後バットマンの前に立ちはだかるであろう事に対し、何の驚きも持ち得なかったんです。この人、きっと心のどっか底には元々悪が潜んでたんだろうなっていう変な黒さを登場した時から持っていたから。多少バカに見えるほど、真っさらな正義感の塊としてクリアなイメージを持たせて欲しかった。
あと、タイトルの『ダークナイト』。私ったら深く考えずに勝手にジョーカーの事だと思っていたんですが、これがバットマンの事だったというのが私的には超衝撃でした。能天気ダークヒーローに大逆襲された気分。本当、勝手な思い込みの結果ですけど。
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2008.08.18 記
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