[コメント] おくりびと(2008/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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『お葬式』と『小早川家の秋』とを足して2で割ったような題材に、自然の情景を織り交ぜながら生き物の「生」と「死」を描き出す。
チェロ奏者という身分を剥奪された主人公は「この運命はいったい何を体験させようとしているのか」と心の中で繰り返すが、それはまぎれもなく実父の「見送り」のためであった。
社長は妻の「見送り」を機にあの仕事を一生の仕事としたという。ならば主人公は実父の「見送り」を機にあの仕事を一生の仕事とするだろう。たとえ子どもが生まれても胸を張って「お父さんの仕事」と言えるだろう。そんなふうに思わせるラストだった。
直近で『青い鳥』の阿部寛を観ていたせいか、本木雅弘の巧さに眼を奪われた。ああいうのを役を作って役に入るというのではないだろうか。この映画については5点を献上するが、余貴美子演ずる事務員が子どもを置いて男と逃げてきたという設定は、もしかしたら余計かもしれないなと思ったことと、広末涼子の表情作りの貧しさはこの映画のテンポを狂わせていたようにも感じたこと、の2つが気になった点として残った。
しかし、余貴美子はいい女優だと思わざるを得ない存在だったし、アクの強さが抜けた山崎努も得難い存在だと思う。故緒形拳と比較されることの多い役者であるが、当然ながらやはりそれぞれ持ち味があり、この作品の山崎努を観るにつけ、緒形拳は新国劇がベースの役者だったのだと改めて認識させられた。
余談だが、この映画を鑑賞した映画館は、シネコンではなく古式ゆかしい劇場だったのだが、「携帯電話・録音録画NG」のマナー喚起フィルムの後、すぐに本編が始まって、非常に心地よかった。シネコン系によくありがちな約20分も続く「別に観たくもない映画の〈これはスゴイんです〉押し売り予告」に辟易していたので、ものすごく清々しかったし、ストレスなく本編に向き合うことができた。
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