[コメント] 落下の王国(2006/インド=米=英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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前作『ザ・セル』が気に入ったので本作も楽しみに観たが、相変わらずビジュアル優先(褒め言葉)で十分楽しめた。『ザ・セル』と比べると映像のインパクトは落ちるが、ストーリーはこっちのほうが馴染み易くまた映像との結びつきも良くなっている。 幻想的な建物や風景(しかも実在の建物や風景!)を背景に繰り広げられるので、一つの写真として見てもとても美しい。冒頭の機関車のシーンはまさに動く写真だ!
しかし惜しかったところを3点。 1.背景を優先しがちな為ロングショットが多く、ストーリーにやや客観的になってしまう。 2.子供の茶々が入ったりロイが話を止めたりするのでテンポが悪くなってしまう。3.おとぎ話と現実のリンクやその意図が分かりずらく、そもそものおとぎ話も悪役の印象が薄かったりと盛り上がりに欠ける。この点で評価を上げることができなかったのではないか。
しかし各登場人物の最後には、スローモーションなどの演出も相まって悲劇的かつドラマチックで胸を締め付けられた。特に階段井戸での敵兵がわらわらとまたごちゃごちゃと動いている背景は物語や聞き手(女の子)の混乱ぶりを表していてとても良かった。ラストの無声映画のラッシュは『ニューシネマパラダイス』のラストを、現実の登場人物とおとぎ話の人物のリンクは『バロン』を彷彿させた(そういや、あれもおとぎ話の主人公が一旦死にかけた)。
自分の目的を果たす為に大人が子供に聞かせるおとぎ話が、次第に立場が逆転して子供に教えられ、救われるところが面白かった。これが聞き手が大人なら彼の気持ちを理解・共感してしまうが、子供のある種わがままだが純真さな所に救われたのだろう。人を癒す過程で自分も癒されるということがあるが、自分の鬱屈した思いを吐き出すことで彼は救われたのかもしれない。
ラストの解釈、自分はロイの足は治っていないと自分は考える。でも女の子の心の中では元気にスタントをしている。ロイも以前のように歩けないが、その精神は以前と同じように立ち上がっていると思う。新しい恋人もできていると考えたい。最後の「サンキューサンキュー」は監督から映画の先人に向けての気持ちも入っているのだろう。彼女の純真なこのセリフと懸命なスタントの映像を見ていくうちに涙が出てきた。
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