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[コメント] 殺人カメラ(1948/伊)

調べると、1948年に撮影された映画だが、公開は1952年であり、主要な映画サイトでは1952年の作品として登録されている場合が多い。
ゑぎ

 48年のロッセリーニ作品には『ドイツ零年』と『アモーレ』があるが、本作は多分『アモーレ』の後に撮影が始まったと推察する。私は『アモーレ』の第二話「奇蹟」との近親性をとても感じた。

 「これは喜劇」とナレーションがあり、ミニチュアの舞台、海と空の背景がしつらえられる。そこにディゾルブで山や町並み、噴水、建物、人々を置いていく手。まるで神の手かと思わせられる。このプロローグが既に象徴的だが、神と教会、聖人のモチーフ。舞台となるのは南イタリアの港町。断崖と曲がりくねった道。町の中心にある大きな教会と凄い階段の斜面。序盤すぐに驚かされるのは、この教会と階段を使った恐るべきモブシーンの造型だろう。こゝで、俯瞰ショットからの緩いズームインがある。

 といった具合で、まずは『アモーレ』第二話とのロケ地の類似を指摘できる。斜面の使い方という点では、『アモーレ』の方が上をいくという気はするが、終盤で先生(医者)と司祭が「この町は階段だらけ」と愚痴をこぼす場面は象徴的だ(貧乏人の葬式は階段を使わないで済む、つまり低地に住んでいるので楽だと云う)。とにかく本作もビジュアルとしての一番の面白さは「斜面の映画」としての画面造型に拠っているだろう。

 そして、上に書いたズームインの先にいた男−みすぼらしいお爺さんが導く聖アンドレアの奇蹟が本作のメインのプロットだ。それは『アモーレ』で描かれたアンナ・マニャーニと聖ヨセフとの奇蹟とは全く内容は異なるが、しかし、町の人々を含めた登場人物たちを戯画化して描く眼差しやスタイルには矢張り類似性を感じてしまうのだ。また、過去に撮った写真を壁に貼って撮影すると、写真に映った姿のまゝの格好で瞬時に固まってしまうというアイデアの秀逸なこと。画面のスペクタクルでは『アモーレ』に軍配を上げるが、純粋なコメディとしての面白さでは本作の方がかなり上をいく。映画に教訓話を求めたがる観客にも本作の受けはいいだろう。

(評価:★3)

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