[コメント] イーグル・アイ(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
彼は、優秀な兄のコピーのような存在として登場する。唇をわななかせ落涙する葬儀のシーンは妙に過剰演技に見えたのだが、これはきっとアンチ・アクターズ系の芝居でいくぞという、ラブーフとカルーソー監督の示し合わせがあったのだろうと解釈した。この粗雑な脚本を役者と演出家の側に引き寄せるためには必要なことだ。
主人公の意思に反した行動をとらせるにはどうしたらよいか。この命題はまさにスーパーコンピューター「アリア」に与えられた使命であるのだが、カルーソーはここにヒッチコック流演出術をもって応えているようである。
それはつまり無機的で表層的な人物造形、巷で指摘されている作品でいえば『北北西に進路を取れ』のロジャー・ソーンヒル(ケイリー・グラント)や『2001年宇宙の旅』のボーマン船長のような、登場人物の内面に立ち入らないキャラクター描写の路線であるということだ。ま、ラブーフにしてもモナハンにしても、そこまで冷血ではないのだが。
ここはむしろビリー・ボブ・ソーントンに注目すると分かりやすいかもしれない。己を役柄に同化させる演技派・技巧派の彼の登場シーンは、スクリーンにふいに板尾創路を発見したときのような驚きがあったのだが、それにしてもこの映画のソーントンはどうだ。内面の深みなど滲ませなくても、身体性、殊にその声と顔面力を駆使して、見事に「追う男」を演じている。
確かにアリアの存在は気にいらないのだが、これも顔面の存在力が抜群のロザリオ・ドーソンが、あの球体を鉄パイプでぶん殴れば事切れるといういい加減なオチに免じて許そうかとも思う。人物を駒のように動かしてアクションを持続させる、その部分ではなかなかうまくできたサスペンスだと感じたからだ。
****
以下、映画で学ぶトリビアのためのキーワード
●ペンタゴンから連邦議会議事堂に至るスペクタクルシーンに登場する無人機は「MQ-9 Reaper」(英語版wiki)
●議事堂で行われるのは「一般教書演説」(日本語版wiki)
●ギロチン作戦による暗殺要人リストは「大統領継承法」(日本語版wikiの「アメリカ合衆国大統領」の項目にあります)
あとちなみにアリアの声はジュリアン・ムーアだそうです(ノンクレジット)。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (4 人) | [*] [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。