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[コメント] その日のまえに(2008/日)

あくまでもB級にこだわる大林宣彦監督の意地がこぼれていますね。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私、実は家族とも家内ともうまくいっていないので、今こういう作品を見ると苦しくて苦しくて、もうどうでもいいや、という気分にさせられてしまいます。

できすぎた環境の中で亡くなっていくこのドラマの主人公である女性があまりにも素敵で、そしてその行動原理もとても謙虚で、自分の置かれている環境との隔たりに辛くなりました。

それが映画の狙いではもちろんありませんが、本当に辛い作品です。(私にとって)

最後の奥さんが手紙を看護婦さんに委ねて奥さんが亡くなった後、ご主人がその手紙の封を切ると、そこには「忘れていいよ」のひとこと。看護婦さん曰く、奥さんは何度も何度も手紙を書いて書いて、そして捨てて捨てて、最後に残そうと決意した言葉がこれですね。

私だったら喜んで忘れてしまいたくなりますが、このドラマの展開からすると、このご主人は一生この奥さんの亡霊に付きまとわれるんでしょうね。

チェロのかなでる音楽が何しろ素晴らしい。

宮沢賢治をミュージカル仕立てし仕上げた作品と解釈しました。

同じ頃、小津安二郎監督の『秋日和』という作品を拝見しましたが、ここでも母一人娘一人の生活で、娘が結婚を考えていると母親が「忘れていいのよ」よ言っておりました。

家族だから忘れる、という行為に抵抗を感じますが、忘れられる立場を印象づける2作品ですね。

2010/04/24 自宅

(評価:★3)

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