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[コメント] WALL・E ウォーリー(2008/米)

現実の自国(アメリカ)を暗に批判し、その未来を見事に映像化している。これは夢ではないかもしれない。
chokobo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







擬人法という作戦は、古くから使われている方法で、古代ギリシャの時代からこの方法は採用されているらしい。これはある意味、宗教的な方式であって、現実にあることを示しつつ、擬人化による比喩表現により、臨場感を高める方法だそうだ。

ピクサーの徹底した3Dアニメには、こうした倫理感が徹底していて、大人でも子供でも楽しめる点において新しい分野と言えるだろう。

ディズニーや日本の一連のアニメがこの擬人法の分野を確立させたといえるが、映画的な手法として優れている点でピクサーのこれまでの功績は大きく評価されていいと思う。

中でもアンドリュー・スタントンの作品には、自国(アメリカ合衆国)に対する痛烈な批判が込められている。

この映画も、前作『ファインディング・ニモ』においても、その批判のネタは痛烈だ。

前作で不自由な生まれの子供を主人公にしているが、今回は最初からアメリカ(広くは地球)の未来を大胆に見せてしまっている。その荒廃した地球の無残な状況に、アナログな掃除ロボットを主人公とするところがユニークだ。この設定だけで、見る側は十分に感動できる。

そこに表れる未来ロボット。彼女(?)は、地球に生命体が存在するかどうかを調査に降臨する。そこでウォーリーと出会う。この二人のラブストーリーがこの映画の中心であって、それだけで楽しめる。

しかし、未来の地球は、汚染物質のおかげで巨大な宇宙船で人類全体が宇宙に避難してしまっている。その宇宙船で繰り広げられている現実は、まるで『2001年宇宙の旅』で描かれている機械(コンピューター)による人間支配だ。

勝手な想像を加えると『WALL・E』のWALL(壁)とは『2001年宇宙の旅』のモノリスではないかとも思わせる。人類は常に壁を超えてきた。しかし、越えられない壁、それは時間である。その時間の壁を『WALL・E』で表現しているように思えてならない。

宇宙船で機械まかせで運行する中、ウォーリーが持ち込んだ植物のおかげで、ようやく人間が機械のいうことを拒否し、自ら宇宙船を操縦しようとする。この格闘シーンで、大きな宇宙船が揺れるシーンは、まるで『タイタニック』だ。宇宙船地球号のなれのはてが、機械任せの社会だとすると、そこから脱出しようと必死に生きる人々こそ、地球人としてふさわしいタイタニック号の生き残りなのかもしれない。

そんな過去の映画のパクりを加えて、この映画は最後に機会の男女(ウォーリーとイヴ)の仲が結ばれるシーンで終わろうとする。これが機械同士の恋愛であっても感動的なのは、それほど人間の心に感動が失われいることの反比例なのだろう。

現在と未来、人間と機械、など、あらゆる対比を未来に据えて、現実の我々に警笛を鳴らしているという点で評価できる映画だったと思う。

素晴らしい作品でした。

(2008/12/30)

浦沢直樹の『プルートゥ』第6巻を読んでいたら、書評に面白いことが書いてあった。

鉄腕アトム』も人間を信じて戦いを続けるということ。

これはまさに、この映画の主人公そのものだろう。

人間が作り出したロボットが人間を信じて、人間が想定していること以上に仕事を継続する世界。まさにこの映画そのものではないか。

そしてこの映画の作者が、かつての手塚治虫に触発されてこの映画を作っていたとしたら驚きである。

単にロボットの映画ということだけではなく、人間が生み出した持続可能社会を、ロボットに委ねる社会が存在することに、恐怖を感じてしまう。

(2009/01/03)

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)Keita[*] debussy[*]

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