コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] ラースと、その彼女(2007/米)

優しく、あたたかなおとぎ話
tamic

子どもを育てていると、必ず子どもの気持ちを“受け入れましょう”と言われる。同化したり、諭したりするのではなく、“受け入れる”ことが大事なのだそうだ。そのままの自分を受け入れられることで子どもは安心し、外の世界へ一歩を踏み出せるようになる。

しかし実際には、“受け入れる”というのは難しい。自分の近しい人物であると、なお一層距離がとれず、自分の気持ちを押し付けたり、相手の気持ちを否定したりしてしまう。この映画を見ていて、他人(ひと)を“受け入れる”とはこういうことなんだなと、しみじみと思った。

兄夫婦はラースの奇行に驚きながらも、何とか自分の気持ちをコントロールして、ラースの行動を受け入れ、合わせる。そして、医者も、ラースを好ましく思っている町の人々も。現実はこんなにうまく行くわけはないだろう。でも、もし誰かが苦しんでいるときに、周りの人たちがこんなふうに相手を思い、あたたかく見守り、受け入れ、応援することができたら、どんなに素晴らしいだろう。

もっとも望ましいのは、その受け入れられる安心感を親が子どもに与えることだ。でも、世の中そんなに甘くないし、親だって人間だから、そんなにうまくはいかない。ラースほどではないにしろ、誰しも何かしら自分の存在への不安を抱えているのではないだろうか。だから、閉じこもりながらも必死に笑顔を作り、誠実に生きようとするラースに、兄嫁の妊娠をきっかけに心が決壊して、人形に恋するラースに、共感してしまう。

誰かに受け入れられたい、誰かを受け入れたいという両方の思いを満たす、優しく、あたたかなおとぎ話だと思った。とても良かった。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (1 人)ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。