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[コメント] アラトリステ(2006/スペイン)

砂を噛み泥水をすすり無様な姿をさらし堂々とする。「かっこ良い」という言葉で語ってはならぬ、本物の男の生き様に魅せられる。
シーチキン

20年以上にわたるスペイン没落の歴史を描く大河小説が原作であるために、どうしても個々のエピソードをつなぐ形式になり、唐突な感じや脇役の行動に「何故?」という戸惑いなどが出てくるのはやむをえないか。

だが、この映画にはそれらのエピソードを太く貫く、主役たるアラトリステの生き様が凄みと迫力をもって描かれている。そう思わせるだけの力が一つ一つのシーンにはある。

最初の暗殺を請け負うシーン、相棒となる人間であっても背中をさらすことを嫌い互いに先を譲り合う。また、寝るときであっても短剣を握りしめて寝るような暮らし。

特筆すべきは戦場のシーン。坑道爆破では、爆弾に点火して相手をふっ飛ばして終わりではなく、その後、狭い坑道に充満する硫黄ガスからかろうじて這いずり逃げ泥水をすすり生きのびる。給料が支払われないと不平を言う兵士。

これらの迫真のシーンがあってこそ、マドリードでの「剣客」としての生き様が光る。それを貫く柱となっている。この重みと凄み、そして時に見せる切なさをまとった主役を演じきったヴィゴ・モーテンセンはたいしたものだと思う。

骨の髄までしびれさせる男と、そして女の、生き様を存分に堪能できる一本。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)けにろん[*] ルクレ[*]

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