[コメント] トパーズ(1969/米)
書類奪取の緊張感や黒白市松模様の床に紫のドレスが広がる印象的なショットなど、シーン単位で見れば決して悪い出来ではない。スター不在とも云われるが、ヒッチコック映画の中でミシェル・ピコリやクロード・ジャド、フィリップ・ノワレの姿を拝めるなんて嬉しい限りじゃないか。
最大の問題点はシナリオに纏まりが欠けることではなく、世界を叉に掛けた物語でありながら、その移り変わる舞台を有効に活かしえていない点だろう。要するに、この映画に登場する様々な舞台は記号的な「地名」に過ぎず、装置として機能する具体的な「場所」とはなっていないのだ。『バルカン超特急』の「列車」、『逃走迷路』の「自由の女神」、『見知らぬ乗客』の「遊園地」、『北北西に進路を取れ』の「ラシュモア山」、これらに匹敵する舞台の使い方が『トパーズ』のコペンハーゲン・ワシントン・ニューヨーク・ハバナ・パリの中にひとつでもあっただろうか。というわけで結論としては、じゅうぶんに面白いけれどもヒッチコック作品としては不満あり、というなんとも常識的な。
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