青春時代を過ぎての疲れ具合、あきらめ具合を出しつつ、反骨精神のかけらや、やんちゃさを残してるのが垣間見える辺りがいいです。もう36歳になってしまった女の側面と、まだ36歳でいる女の側面がいろんなシーンで交錯します。　

二つある濡れ場のシーンがいいです。 元旦那とは、会うのも嫌がっていながら、彼の誘いに抗いきれず、拒否しようとしつつも受容してしまうせめぎあいがリアル。 一方で年下男の行動を冷めた目で見ながらも、彼の一途さを受け止めていき、やがて彼を欲してしまう変化の具合がよく出てたと思います。

さて、結果として、ノン子が持ち始めた元旦那への期待は裏切られてしまいます。 一方、年下男が持ったノン子と一緒になる夢を裏切ってしまいます。 夢見心地になることも、夢見心地にさせることもできない36歳の今だけが浮かび上がります。

１０年前なら、「結局、何だったの？」と思うだけの作品にしかならなかったかも。 でも、今の私が見たからこそ、36歳への共感や羨望を感じてしまったようです。 36歳ノン子もまだまだ若いなあと思える辺り、私は作品の罠にはまったのかもしれません。

ところで、作品中に出てくる自転車がなかなかの演出をしていると思いました。 いい得ぬ欲求不満をぶつけて、通りのゴミ箱や看板を蹴り倒したり、 年下男と二人乗りをして、二人の距離を接近させる道具となったり、 一人、風を起こしながら颯爽と走ったり。 36歳の人生の疲れ具合と、まだ持ってる元気さがうまく出てたように思います。