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[コメント] 生まれかわった為五郎(1972/日)

ギャグ畳み込む序盤、中盤の宴会シーンのカーニバル的浮遊感、人情バカ三人が交錯して闇雲に盛り上がる終盤。森崎喜劇の理想郷。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
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開発と抵抗という主題からして森崎らしい。パッションの取り方がらしいのと同時に、建設中の港湾と撤去間際のボロ屋の画の対比にある求心力が彼らしい。『党宣言』や『ニワトリはハダシだ』の原型がここにあり、当然に撮影環境はこちらの方がいい訳で、醸し出されるパワーは尋常ではない。

満員電車からの放尿、便所の水呑み、小便ビール、そしてラストも駅の便所というお下劣な小便ネタの連鎖が素晴らしい。処女のピンサロ嬢緑魔子と翻弄される財津一郎(ダイジョ〜ブという後年のギャグを飛ばす妙なシーンもある)が素敵だ。蒟蒻食い過ぎると鳥目になるのだろうか。殿山泰司のヤクザもまた素敵、巧いものだ。唯一残念なのは三木のり平の親分に余り魅力がないこと。

中盤の宴会はどうしてそうなったのか実はよく判らないが、いつの間にか全員が祝祭ムードで盛り上がっているというカーニバル描写。まるで全員がハナ肇に感染したみたいなのだ。緑の歌がとてもいい。

北林谷栄の伝聞により緑がハナを蘇らせる件の土着性も印象に残る。「白痴」の聖性を描き続ける森崎のベースにあるもの(ユーモアと不即不離というニュアンスも含めて)が感じられる。本作は、どっちの方向を向いて寝るかの変遷の映画でもある。緑と財津が正反対に寝る序盤、各々が出鱈目な方角を向いて雑魚寝する中盤を経て、このハナと緑の同方向を向いて寝る呪術の件に至る。

終盤の竹を割ったような爽やか(?)な三角関係の処理も麗しい。本作はハナ単独主演喜劇のほぼ最終作。この傑出した喜劇役者のキャリアの掉尾を鮮やかに飾っている。

(評価:★5)

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