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[コメント] チェンジリング(2008/米)

力強い映像。鬱になりそうなくらいの衝撃。文句無しの5点。
青山実花

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







久々に感じた、映像の力強さ。全ての場面に無駄が無く、全く時間を感じさせない。観る者をグイグイと引き寄せ、ストーリーに引き込まれる。

まず、仕事に出る為に、幼い息子に留守番をさせなければならない母親の切なさ、やるせなさ。大抵の観客は子供の有無にかかわらず、まずここでアンジェリーナ・ジョリーにシンパシーを感じるのではないか。後ろ髪引かれる思いで家を出る母親の気持ちに沿わずにはいられない。そして帰宅後、姿の見えない息子を半狂乱になりそうな気持ちで待つ、その母心は涙なくしては観られない。

息子発見の一報が入り、プラットホームで対面する場面も印象的だ。列車から降りてきた子が息子ではないと分かった時のショック。さらには、ジョリーに対して馴れ馴れしくママと呼ぶ少年。彼が何故そのような振る舞いをするのか、理由が全く分からず、何かとても気味悪く、背筋が薄ら寒くなるような嫌悪感を覚えた。

この神隠しのような子供の行方不明事件と平行して描かれる、変質者による殺人事件もまた衝撃だ。この事件だけで一つの映画ができそうなほど、大変にショッキングな話だ。犯人を演じたジェイソン・バトラー・ハーナーが良い。登場シーンから、神経質そうな変質者の様子を上手く演じていた。死刑執行のシーンも非常に印象深い。

そして何より、観ていて殺意さえ覚えそうになるのがジェフリー・ドノヴァン演じる警部であろう。何を訴えても、相手を見下すようなその態度に、観ている私の方が汚い言葉で罵りたくなるような衝動を感じた。

しかし、そんな絶望的は状況においても、一筋の希望の光が常にジョリーの周囲にある事も、この映画の中では重要な意味を持つ。常に味方でいてくれるジョン・マルコヴィッチの存在や、歯科医の所見、学校の担任教師、精神病院の中での同じ境遇の仲間、警察の前でプラカードを掲げる人々・・・。ジョリーは孤立無援ではない、そんな状況が、観る者に安心感を与える。

そうだ、この映画は絶望的な話ではあるし、途中、鬱になりそうな落ち込みを感じるが、希望の映画でもあるのだ。ジョリーは最後まで、そう、死ぬまで、決して希望を捨てはしなかった。息子が生きて見つかる事、それがベストではあろうが、実話としての結果がそこにある。しかし、私は最後まで奇跡が起きてほしいと願ったし、もしジョリーと同じ状況に置かれたなら、同じように息子はどこかで生きていると信じて人生を全うするだろうと思う。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (3 人)chokobo[*] ジェリー[*] デナ

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