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[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

ダニー・ボイルの才能には懐疑的だが、その情熱には感服。
ぐるぐる

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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急速な近代化、経済発展して来たインドでのロケ、撮影は文句無しに素晴らしいし、この作品をモノにした情熱には恐れ入る他無いのだけど、個人的にはどうもこの監督とは相性が悪い。単純な感想で言えば、これも仕掛け過ぎのせわしないだけで笑えもしないし泣けもしない映画だったけど、ラストの群舞ですべてOKにしてしまう図々しさには感服。ラティカのかわいさにも降参。

この映画で、人間としてきちんと描かれていた(というかまともな演技をしていた)のは、ある意味脇役のひとりでしかない取り調べの刑事だけだと思う。あとは監督が仕掛けたゲームのコマでしかない。たとえば、司会者がウソの解答を示唆したりインチキとして警察に引き渡したりする意地の悪さはどこから来てどこへ消えたのか?弟に対してボスとして君臨して来た兄が急に自己犠牲の精神を発揮して弟の純愛に手を貸すのか?権力に寄り添う生き方をして来たかと思えば突然身の危険を犯してもジャマルへ向かうラティカの想いのブレは何故か?人物の内面を無視した監督のご都合主義でしかないこうした展開で、これではクイズ番組のサスペンスとしても兄弟の愛憎劇としても純愛ものとしてもドラマとして成立するワケが無い。

この、インドのスラムの物語は、同じBRICsの「仲間」であるブラジルのスラムでの物語だった『シティ・オブ・ゴッド』のヘヴィーなドラマとは比べるまでもない「ライト」なエンターテイメントであって、それがラストシーンに象徴されている。もう「人間」を描く映画は時代遅れだと言わんばかりのこの監督の姿勢には、やはり共感出来ない。

(評価:★3)

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