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[コメント] スラムドッグ$ミリオネア(2008/英)

バランス感覚が最高の映画だ。スラムの現実を見せながら、希望も感じさせる爽快感。これこそ、王道娯楽映画なのだと思う。(2009.04.26.)
Keita

**ネタバレ注意**
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インドのスラム街の生活という過酷な現実も垣間見せながら、その地で育った青年がクイズで一攫千金を手にするという夢も見せる。地獄と天国。過酷さと希望。両方をしっかりと見せてくれた。見事なバランス感覚で培われた、王道のエンターテイメント映画だ。

バランス感覚という点で言うと、映画を構成するいくつかの主題のバランスが良く、それが物語内にうまく配分されている。その絶妙なブレンドにより、「クイズ・ミリオネア」というひとつの番組の背景で、これだけ多くのことを語れるんだということに感心させられた。本当に本当にピュアなラブストーリーがあり、別々の道を歩む結果になる兄弟の物語があり(兄のエピソードは同じくスラムをリアルに描いたブラジル映画『シティ・オブ・ゴッド』を思い出した)、勉学よりも経験の大切さを語るメッセージ性がある。

映画の構成もバランス感覚がしっかりある。冒頭はクイズ番組と同様にA〜Dの選択肢が用意され、それの答えをラストシーンで示すという枠組みは、物語にすごくフィットした形だ(ラストシーンで示される「D.運命だった」は本当微笑ましい…)。過去、現在、そしてテレビ番組内という3つをテンポ良く繋いでいくうえでの流れもすごく良く、時系列上でよくわからないと感じさせるシーンが少なく、非常にわかりやすい仕上がりになっている。

バランス良く紡がれた物語は、結果として終盤の盛り上がりにつながっていく。あんなに大勢が盛り上がるのかはやや疑問だし、経験上知っていた問題ばかり出題されていることはご都合主義的にも思える。 それでも、テレフォンで繋がったあの瞬間。そして、傷に優しくキスをするあの希望に満ち溢れたラストシーンの美しさ、それが細かなことを気にさせなかった。

クイズに正解したことよりも、彼女と再会できたことを喜ばしく思えたこと。それが、この映画が素晴らしい所以だと思った。

(評価:★4)

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