ロケを手際よく済ませる必要性から生み出されたかのような早撮り撮影スタイルが独創的だ。寄りのワイドレンズなど、カメラのセットアップであれこれ悩まず一発勝負の心意気が楽しい。それを生かした編集のリズムも相まって、導入部はなかなか期待が持てた。

主人公の半生をクイズ仕立てで見せているから、生い立ちに沿って設問の答えが導き出されていく展開は不問に付す。エピソードと回答がいちいち一対一対応になっている律儀さもまた了解しよう。だが子役も含め主要なキャストが一向に魅力的に見えてこない。加齢に従い魅力がマイナス成長なのがますます辛いところだ。スラム、少年とくれば『シティ・オブ・ゴッド』を連想してしまうが、俳優部の充実度は比較する気にもなれない。

論理展開は気にしないと書いたが、指摘だけはしておこう。既出ではあるが、生放送で「テレフォン」を使うのは反則的。最後の問題の難易度が低い。

そしてそもそも主人公が番組に出られた経緯がうやむやだ。彼はなぜか応募電話が繋がりやすいタイミングを知っていたし、コールセンターの端末にアクセスできる立場だった。むしろここは不正をしたんだ、とはっきり見せた方が、初恋の彼女への恋心が盛り上がったのではなかろうか。