[コメント] 見えざる敵(1912/米)
ギッシュ姉妹のデビュー作であり、まだ幼さの残るその可憐さは、鮮烈な印象を与える。モノクロームで映し出されたその華奢な美貌は、サイレントという事も加わって、人形のような、人間離れした美しさがある。また、三つの空間を繋ぐクロスカットも見事。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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冒頭の、姉がほっそりした指先で妹の顎にさわるという、ほんの些細な仕種だけで既に、この世ならぬ美が完成されている。この、ガラス細工のように繊細で危うげな少女二人が犯罪に巻き込まれる姿からは、どこか倒錯的な美が醸し出される。
壁の穴から挿し込まれた拳銃に怯える二人の美少女、という、取りようによっては猥褻ともいえる舞台設定。果敢に拳銃に立ち向かおうとしながらも、至近距離で拳銃を見て失神する場面など、何か見てはいけないものを見たような気さえしてしまう(笑)。
二人の兄役を務めていた俳優の澄んだ瞳も、モノクロでは白く透明に映るので、より印象的に見える。欲深いメイドの形相も、濃い。彼女が壁の穴から抜き差しする拳銃で姉妹を脅かすのが本作のメインで、この行為が何やら二重の意味で犯罪的に映じる。
隣り合いつつ隔てられた二つの部屋を結ぶ穴。遠く離れた場所に居る、拳銃に怯える姉妹と兄を結ぶ電話。銃と電話、という、離れた人や物を結びつける二つの道具を利用したカット割り。三つのドラマが並行し、それはまた三位一体の一つのドラマでもある。
少女はただビクビク怯えているだけではなく、ボーイフレンドから口づけされそうになるとそれを拒み、最後に部屋から救出された後でさえ、ツンとした態度でそっぽを向く。この気の強さと、脅える姿のギャップというのがまた……いや、どうしても話が変な方向に行ってしまうな。
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