[コメント] オズの魔法使(1939/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
私は幼い頃、この「オズの魔法使い」という物語が好きではなかった。「恐い」イメージととっつきにくい印象が付きまとっていたのだ。
というのも、日本の昔話ではあまり「死んだ」「殺した」と言う言葉を使わないような気がする。鬼は、「退治」され「殺す」されない。そして、母蟹を殺した悪い猿でも、ポチを殺した悪いじいさんでも、悪いからといっても「殺され」ない。「こらしめ」られるのだ。
ところが、このオズ。可愛い少女に向かって皆が「悪い魔女だ!殺してしまえ!」って言うのだ。いいのかい? そもそも、その対象たる「魔女」自体良く分からない。日本文化に根づいてないから、それほど恐い存在だとは思わない。まぁ、そんなこんなの理由もあり、この映画に食指が向けられる事がなかったのだが、あるコメテさんとの出会いで観てみようという気になったのだった。
果たして…。はい。ごめんなさい。私が悪かったです。と言いたくなったのは言うまでもない。(汗)
とにかく、この映画は素晴らしいの一言に尽きる。
セピア色のカンザス。ドロシーの可愛さ、そして大人顔負けの歌唱力で歌う“虹の向こうへ”。一転、カラーのマンチキンの細部に至るまで凝りに凝った作り。かかしやブリキ男のダンス!何を取っても素晴らしいの一言に尽きる。
この映画は本当に楽しい。人々の心を楽しくさせる名作であるといっても過言ではないと思う。しかし、この映画の裏で、ブリキ男交代など数々の悲劇的なエピソードがあった。このエピソードを聞き、再びこの映画をみるとまた違った感慨が生まれるのではないだろか。
====以下、撮影中のエピソードを簡単に記述===========
●ブリキの交代●
最初のキャスティングでかかしはバディ・イブセン、ブリキはレイ・ボルジャーとなっていた。しかし、かかしを演じればスターになれると直感していたレイは、妻を引き連れて社長に談判。イブセンとレイは役を交代する事になる。
ところが、撮影から2週間後、イブセンが呼吸難で病院に運び込まれた。原因は、メイクに使われたアルミの粉。肺一面にアルミの粉が吸着していたのだ。撮影の都合で、非情にもイブセンが知らないところでジャック・ヘイリー交代。ヘイリーにはアルミの影響でイブセンが入院している事は知らされず、メイクにはアルミの粉でなく練ったアルミが使われた。退院後、イブセンはMGMを辞める。あ。心配はありません。その後病気は完治し、芸能活動を再開、2003年7月6日、95歳で亡くなったのですから。
●過酷な撮影現場●
楽しいキャラクターのを支えていたのがメイキャップ。 ブリキ男の苦労はもちろん、かかしのレイ・ボルジャーの衣装も大変だった。1時間もかけて顔面をぴっちりゴムで覆うので、毛穴という毛穴がすべて塞がれ、撮影現場の暑さも加わり、身体的な苦労が絶えなかった。当時それほどのメイクをする映画は希で、彼らがご飯を食べていると奇怪な目で見られるため、食事も衣装部屋だったらしい。
当時喜劇役者としてすでに売れていたライオン役のバート・ランカスターの衣装も、何十キロもあるもので、その暑さは尋常ではなかったらしい。
撮影が深夜に及ぶ事はざらで、スタッフの疲れもピークに達していたため、トラブルの絶えない撮影現場になっていた。 西の魔女マーガレット・ハミルトンが炎と共に消えるシーンでは、足元の仕掛けが開くタイミングと炎のタイミングがまちまちになり、大火傷を負った事もあった。
彼女の生涯が、この大作の代償であるかのようだ。本作で未成年にしては異例のアカデミー特別賞を受賞した事で、彼女の人生は転機を迎えた。一躍売れっ子なった彼女は、時に一日18時間も撮影をする程多忙を極めた。そして、関係者達はそんな彼女に少しでも睡眠を与えるため、撮影の合間に睡眠薬を飲ませ、撮影が始まる前に覚醒させるためアンフェタミンが与えられた。一方、太る事も事務所から止められていた彼女は肥満防止の薬も服用していたらしい。そんな生活は次第に彼女を蝕み、ついにノイローゼで自殺未遂をおこす。5度の離婚と結婚の果て、睡眠薬の過剰投与で47歳の若さでこの世を去る。 その間、『スター誕生』など名作にも出演するが、活動は主にステージであった。
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