[コメント] 光に叛く者(1931/米)
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物語はフィリップス・ホームズの究極のジレンマへ至る。自らの仮釈放をチラつかせる刑務所長のウォルター・ヒューストンとの取引を取るか、囚人たちの恩義を取るか。ヒューストンも囚人たちも筋金入りの悪党、杓子定規な刑法と復讐が複雑に入り混じり解決困難。ここまで盛り上げる話法は傑出している。刑務所3対囚人7ぐらいの肩入れのバランスがとてもいいのだ。
本当はここで、結末はお客さん次第と終わらせたい処なんだろう。盛り上がった映画によくあるジレンマだ。しかしこれはハリウッド映画なのだから、終わらせないといけない。本作は何と、この約束事をパロディにする。コンスタンス・カミングスのホームズへの告白をいかにも唐突に割り込ませる。じゃあ釈放だと親父のヒューストンは、自らの出世を棒に振って映画を無理矢理終わらせて、キャメラ目線で一言「こんな結末もあるさ」。なんとラストに来て、シリアス一辺倒の作品がコメディに変貌してしまった。これは凄いと唸ってしまったものだった。ホークスみたいな大物でしかあり得ない余裕だろう。
撮影は30年代前半らしくホークスにしてはフツーで無理矢理褒めても仕方がないが、ヒューストンが騒ぎ立てる囚人たちのなかへ降りて行く件、散髪するボリス・カーロフがヒューストンの喉に剃刀あてながら首切り殺人の話題になる件、カミングスがホームズの恋しさから盗んだハンカチを図星で取り返す件、囚人たちの狂騒のなか密告者のクラーク・マーシャルがカーロフに追い詰められる件(殺人は扉の向こうで行われる)など、ちょっとした名場面がたくさんある。ホームズの率直な造形が好感度大。
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