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[コメント] ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢(2008/英)

ドMマグロ天然ボケのウォレス氏に言葉を持たないグルミット君がツッコミを入れるためには、とにかく寡黙に忠犬スタイルを貫いて「アクション」するしかない。これほど「アクション」が雄弁なツッコミとして必然化する設定を愉しまない手はない。しかも観客からツッコむ暇だけは絶対に与えないというナンセンスのスピード感と漲る自信。至上の英国ド突き漫才アクション。魅力的過ぎる手触り。参った。怒濤と豊穣の30分。
DSCH

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







真摯に寡黙に尽くせば尽くすほど間接的にド突いてるようにみえる・・・

さらにあらゆる古典(!)映画へのオマージュはそれを目的として目指されたものというよりは確かに映画の骨として根付いており空中分解しない。しかも「敬意」を感じさせる余裕すらある。映画の深遠で豊穣な歴史を感じてその点身構えていなかった分感動しました。映画の神が宿っていると思います。ええ、マジな話です。これだけ魅力的原始的に単純化された活劇で恋まで盛り込んじゃってしかも至上のナンセンスと画面の手触り。ネタの展開が出し惜しみなく高密度で速い速い。全てが全開。

あと、これは想像の範囲に過ぎないのですが、ただでさえ気の遠くなるような根気の作業による撮影に、あくまで登場人物の動的アクションにリアルタイムに追いすがる映画的なカメラワークを絡ませるんですね。この手のアニメの多くはサイド固定から俯瞰的視点で動きを表現させてカット割の工夫で「映画的」に見せているように感じますが、本作はそのイメージへの反発で満ちています。これは相当の偏執的覚悟とこだわりだと思います。「何てことないシーン」を映画的に「何てことなく見せる」ために、すさまじく高度な技術と作劇への理解が投じられており、それが最終的に「ただの映画」一切を凌駕しているように感じるのです。

あと、涙の質感ですね。例えば「ピングー」ではオーソドックスに水色の涙表現で、これはこれでかわいらしくグッとくるのですが、本作の涙の適度な透明感は素晴らしいですね。情感が凝縮されている。ググッときました。

それにしてもヒチコックを『エイリアン2』と『モンティ・パイソン』で回収しますか・・・しかしエイリアン2が古典とは感慨深いものがあります。いやあ本当に私も大好きなんで・・・本当にどうもごちそうさまでした。

余談ですが、しょっぱなから容赦ないので本当に笑いました。「はいそうですよ〜オトナ向けですよ〜びっくりしましたか?(笑)」って感じですか?意地悪な人ですね、監督さん。いや、真摯な人というべきでしょうか。

※ シリーズ初見なので★5をつけるのは若干躊躇われましたが、まあこれだけ愉しませていただいたので、いいかな、と。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)袋のうさぎ 3819695[*]

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