[コメント] ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢(2008/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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真摯に寡黙に尽くせば尽くすほど間接的にド突いてるようにみえる・・・
さらにあらゆる古典(!)映画へのオマージュはそれを目的として目指されたものというよりは確かに映画の骨として根付いており空中分解しない。しかも「敬意」を感じさせる余裕すらある。映画の深遠で豊穣な歴史を感じてその点身構えていなかった分感動しました。映画の神が宿っていると思います。ええ、マジな話です。これだけ魅力的原始的に単純化された活劇で恋まで盛り込んじゃってしかも至上のナンセンスと画面の手触り。ネタの展開が出し惜しみなく高密度で速い速い。全てが全開。
あと、これは想像の範囲に過ぎないのですが、ただでさえ気の遠くなるような根気の作業による撮影に、あくまで登場人物の動的アクションにリアルタイムに追いすがる映画的なカメラワークを絡ませるんですね。この手のアニメの多くはサイド固定から俯瞰的視点で動きを表現させてカット割の工夫で「映画的」に見せているように感じますが、本作はそのイメージへの反発で満ちています。これは相当の偏執的覚悟とこだわりだと思います。「何てことないシーン」を映画的に「何てことなく見せる」ために、すさまじく高度な技術と作劇への理解が投じられており、それが最終的に「ただの映画」一切を凌駕しているように感じるのです。
あと、涙の質感ですね。例えば「ピングー」ではオーソドックスに水色の涙表現で、これはこれでかわいらしくグッとくるのですが、本作の涙の適度な透明感は素晴らしいですね。情感が凝縮されている。ググッときました。
それにしてもヒチコックを『エイリアン2』と『モンティ・パイソン』で回収しますか・・・しかしエイリアン2が古典とは感慨深いものがあります。いやあ本当に私も大好きなんで・・・本当にどうもごちそうさまでした。
余談ですが、しょっぱなから容赦ないので本当に笑いました。「はいそうですよ〜オトナ向けですよ〜びっくりしましたか?(笑)」って感じですか?意地悪な人ですね、監督さん。いや、真摯な人というべきでしょうか。
※ シリーズ初見なので★5をつけるのは若干躊躇われましたが、まあこれだけ愉しませていただいたので、いいかな、と。
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