映画の大半を占める親戚一族の描写、巧妙にはできているんだけどオレには嘘にしか見えなかった。お子様ランチ、八百長、御都合主義の連続だ。ちょっとは田舎のイヤなところも描こうと思ったのか、「もうやったのか？」などと言うおっさんが登場していかにもあるあるネタのような処理がなされていたが、オレに言わせりゃあんなもん、ご当地に伝わるわらべ歌か俳句に見立てて横溝チックに惨殺されても仕方のないレベルの発言だ。だからヤなんだよ田舎とか親戚とか…　ビールとバヤリースしか飲み物ないんか…

オレは田舎や家族や親戚のねばねばしたしがらみを嫌って都会に脱走してきた人間なので、この映画は実に居心地が悪い。ただオレにも判るのは、この映画は田舎とそこに集まる一族を実にきちんと描く一方で、そこに存在する筈の鬱陶しさ・陰惨さ・ダサさを注意深く消臭しているということだ。オレのような田舎嫌いがこの映画を気に入らないのは当然としても、もともと田舎好きの人にとってもこの消臭済みの田舎賛歌、嘘くさく気持ち悪いものではないだろうか。

早い話、主人公が蚊帳で寝てる場面があるんだけど、この家に蚊がいるとはとても思えないのだ。同様のインチキは登場人物たちの造形や人間関係にも及んでいるため、キャラクターはいつまでたってもセル画のままで、映画は一向に切実さを伴ったドラマにならない。監督の前作『時をかける少女』には確かにあった、思わず居住まいを正すような真摯な瞬間はとうとう訪れない。説明と見せ場が、寄せては返す波のように最後まで続く。『サマーウォーズ』は、それでよしとする映画だ。漫画ゴラクなんだから多少の御都合主義に目クジラ立てんなよ、と言われれば返す言葉もないのだが、もうちょい何か、心のこもった志のようなものがあるんだろうとオレは期待していたのだ。残念だった。