[コメント] サマーウォーズ(2009/日)
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あれだけ多人数の人物が登場するのに、目立つのは富司純子と桜庭ななみを除けば男性キャラクターのとくに若者であり、無駄な人物が多すぎる(もちろん谷村美月は男性とする)。言っておくが、高校野球に夢中で親戚の球児の一挙手一投足に一喜一憂し、事件の事など眼中にないオバサンというのも立派な役目である。いらないのは「男ってバカね」などとこぼしつつ現実の主婦の役割を淡々とこなしているおばさんたちであり、「ただのガキ」を演じているだけの子供たちなのだ。もっと各々に深い印象付けをできなかったものだろうか?もちろん、それをやっていたら3時間有っても足りないという反論もあるだろう。冗談ではない。ただの1カット、一言のセリフで充分印象は与えうるのだ。「つながり」「連帯」がテーマならば、ただの一人も無用な人物はいない、ということを印象的な意味でも徹底すべきだったろう。それは、連帯というテーマから導き出されるべきコミュニティが、こんなにも大時代的な「選ばれた一族」であることにも充分関係することだ。ここに現われる個々の登場人物は、決して市井の一市民ではない、いわばエリートなのだから(敢えて言うならば、この作品における富司純子のように、90歳になっても矍鑠として一家の中心に座していられる老人は稀有だということも、作品を能天気な現実逃避に見せてしまう要因であるように感じた)。
さらにいえば、パソコンネットのあまりの世界に対する影響力の深さは、ちょっと現実的に見て信じられない。『デジモン』まがいのキャラクターも決して成功しているとはいえなかった。もっと人間的なキャラクターになる可能性は残すべきではなかったか?皆が皆ファンシーキャラクターに己を投影できる人々では有るまい。敵が永井豪『魔王ダンテ』の様なあからさまな悪魔に変貌するのもやり過ぎだ。これは40年前のセンスだろう。
あえて「Wars」を誇示したいなら、主人公に一時的にでもいい、ヒーロー性とまでは行かなくとも「カッコいい」場面を付加すべきだったろう。終始巻き込まれてばかりの神木くんは、ちょっとこの物語の主人公としては物足りなかったと言わざるを得ない。
屁理屈を並べないで素直に楽しめ、という人もいるだろうが、自分は何事も考えずに楽しむつもりで行き、これだけの不満点を抱えて、結局外側からしか楽しめなかった。総ての人が馬鹿になって楽しめる映画など稀有であることを改めて痛感させられたものだ。自分は奥寺佐渡子のファンではあることを差し引いても。そして細田守の才能をも評価しているだけに、ワクワクしながら上映会場を出られなかったことは、かなり自分にとり哀しいことではあったのだ。
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