会社における、渡辺謙への処遇は嫌がらせ以外の何ものでもないわけであるが、いい年をした大の男が姑息な事をするわい、と情けないような気持ちでストーリーを追っていた。

発展途上国をハシゴさせられる渡辺謙に、「早く、早く、帰国させてあげたい」と思いながら観ていたのだが、私も彼と同様、ラスト近くにはケニアの風景を懐かしく感じたのだから不思議だ。

渡辺謙と三浦友和の関係は、『白い巨塔』における財前と里見の関係を踏襲していると言えるが、それは決して山崎豊子さんが書かれるストーリーが画一的であるというわけではなく、人間が持つ心の光と影の表現を、どのような方法を用いて表せば読者が喜ぶかを熟知しての事なのだろう。凄いストーリーだ。