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[コメント] ココ・アヴァン・シャネル(2009/仏)

シャネルという人物が世界と女性との関係に全く違う角度から楔を打ち込んだ人物だということはよく分かったが、それは説明的な映画を観たに過ぎないのであって、映像や音声が私と画面との間に楔を打ち込んだという奇跡が起ったことを意味しない。ただしひとつ素敵だったのが、
ジェリー

この意思的な人物シャネルを演じたオドレイ・トトゥの口元。ものいいたげな不思議な微笑が口元に揺曳することで、19世紀までの女性は魅力を獲得してきた。ところがオドレイ・トトゥの演じるシャネルは、何かを喋るという意志をもつまで、口元は固く一文字に結ばれており曖昧な意志をしっかりと封印する。この白黒はっきりせざるを得ない気性の表現の身体性に、シャネルであることの乾坤一擲の表現の真実性が宿っている。演劇にも文学にも真似できない、瞬時に映像が生成して消えていく映画にのみ許された画竜点睛である。シャネルに似ているとか似ていないとかが重要なファクターではないのだ。

(評価:★3)

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