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[コメント] 女咲かせます(1987/日)

松坂慶子のたぶん最高傑作。『白昼堂々』のリメイクで、野村作品では淡泊だった元炭鉱夫再興の物語が森崎らしく全面展開され、裏社会を謳歌する世界観がここでも突き詰められてある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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長崎の高島炭鉱は86年、本作の製作と並行して閉山している(Wikiによれば、日米経済摩擦解消の政策だった由)。松坂慶子が誰もいないだろうと訪ねると田中邦衛らがまだ生活しているのは、だから自然なことだった。『黄金の七人』みたいな掘削に発破はなるほどの技術転用。

デパート泥棒噺を映画は全く反省していない。好景気の上澄みを頂戴するぐらい当然だとしている。モノが溢れていて盗品が捌けないと清川虹子が愚痴る使い捨て時代。クリスマスで賑わう店内を眺めて柄本明の中華料理店店主は、中国語で毛沢東を引き合いに出しながら、日本の資本主義も終わりだと説いている。なんて森崎らしいんだろう。

そして松坂慶子が素晴らしい。監督との相性もあるのだろうか。乾いて男前なギャグの連発が実に愉しい。この女優さんはこんなコメディが本当は似合っていたのではないのか。湿っぽい役が多かったのは彼女にとって不幸だったのではないかと思わされた。そしてしかし、ホームで駅弁喰らいながら役所広司への少女時代の盗みの告白。いつもの森崎の闇雲な突然の泣かせなのだがこれが抜群だった。なぜだろう。冗談ばかりと思っていた彼女が、冗談のような本当を語るからなんだろう。そして川谷拓三の刑事を婚約者と偽って役所から去って行く巧さ。

撮影は素晴らしい。橋の上で松坂が川谷を背負い投げするシーン、突然にキャメラは川から撮る。これが格好いいのだ。役所の部屋で田舎から出てきた母親の佐々木すみ江を歓待する件は、舞台撮影のようにやや仰角から長回しで撮られるのもいい。役所に与えられた盗品のタキシードから手品の品々が出てくる件、松坂がぶら下がり健康器で役所のプロポーズを夢想する件、清川虹子の花魁道中、どれも笑える。野村作品で良かった藤岡琢也は名古屋章が引き受けて比率は少ないが上々。

今回の宴席の歌はフランキー堺の「もぐら祭り」。♪もぐらの祭りは暗闇祭り と炭鉱夫に相応しい歌。フランキーはこれで紅白に出ているらしい。ボタ山登るラストも地道なロマンチックで素敵だった。

(評価:★5)

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