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[コメント] かいじゅうたちのいるところ(2009/米)

小さい男の子+かいじゅう=ほのぼのと心温まる映画かと思いきや、とても人間くさくてどろどろした感情の爆発オンパレードであった。
伊香

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







冒頭からいきなり、狼の着ぐるみで犬を激しく追いかけ回す主人公、マックス。完全に犬になりきっている。テンションマックス。

……ここでまず、身構えた。 なにかすごいものが始まりそうだ、と。

続いてマックス。 大量の雪でかまくらを作り、お姉ちゃんを誘うも、取り合ってくれない。 お姉ちゃんの友達にいたずらしてやろうと、雪玉を投げたら、よってたかって仕返しされてかまくらまで壊された。でもお姉ちゃんは知らんぷり。

頭にきたので、お姉ちゃんの部屋で暴れてみる。 身体じゅうについた雪を、ベッドやじゅうたんに思いっきり落として。 インテリアの中に、むかし自分が贈った手作りの木工細工を見つけた。 構ってくれない、助けてくれないお姉ちゃんなんて大嫌いだから、これも壊す。 ばらばらになった木片を見て、もっとかなしくなる。

それから母親の登場。 マックスは母に甘えようとするが、仕事やボーイフレンドと付き合うことに忙しい彼女は、あまり時間がない。苛立つマックスは、怒りを体現する。そして押さえつけようとされて、家を飛び出す。

家庭に問題があるからと、一口に言うことはできない。 マックスはマックスなりの、理想がある。みんながなかよく、優しく接し合っていて、誰も孤独を感じることがない、理想郷。そしてそれは、誰かがもたらしてくれるべきだ。

そして、行き着いた先のかいじゅう、キャロルもまたそう思っていた。

王さまが居ればなんとかしてくれる。寂しくないようにしてくれて、夜はみんなで仲良く重なりあって眠る。

しかし、マックスは絶対的な力を持つ王さまなどではなかった。ただの人間であり、ただのマックスだ。 マックス自身がそれを認めた時、それまで彼が絶対視していた母親についてもまた、母である前にひとりの人間だということに気付いたのかもしれない。

理想が実現できずに破壊を繰り返すキャロルに、マックスは「ハート」を贈る。

かいじゅうに食べられなかった王さまははじめてだ。 マックスは、愛で、かいじゅうたちを包んだ。

太陽はいつか死ぬのかもしれないけど、成長することができる生き物って素晴らしい。 かいじゅうのひとりである私もまた、心が荒んだ時に、あのハートマークを思い出したい。

(評価:★4)

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